Research Abstract |
本研究は,筆者が開発したアサーション技法を用いた情報モラル育成プログラム(以下,ATプログラムと示す。)を実施し,プログラム実施時における子どもたちの思考・認知変容や,情意・情動面による意識を明らかにすることが目的であった。 まず,ATプログラム実施前後において,実験群・対照群の2群に分け,質問紙から量的分析による仮説検証を行った。また,ATプログラム実施時には毎時間の振り返りシートの記入を求め,その振り返りシートの特徴的な生徒に対して,ATプログラムの終了後,面接調査を実施し,インタビュー内容の逐語録から,質的分析による仮説生成を行った。さらに,プログラム実施中のICT利用による掲示板の投稿内容および,その回の自由記述の分析を行った。 その結果,質問紙調査から,ATプログラムによって,子どもたちの中で,ICT利用時における情報モラルによる意識の変容がみられた。また,振り返りシート調査から,アサーション技法による情報伝達と,アサーション技法を基にした情報科による情報伝達の双方による理解が促進されていた。そして,面接調査より,日常生活の中でのICT利用および,自己と他者について,意識・思考していることが推察された。さらに,ICT利用時の掲示板と自由記述の分析から,実際に電子掲示板を体験することにより,通信機器利用する際の危険予測による意識が育成され,投稿する際には,自分以外の他者への感情等に配慮を行っていくという感情の変容もみられた。 以上のことから,ATプログラム全体において,「情報モラル」の育成および,思考の一部は変容されることができたと推察できる。また,ある時間の感情を伴った情動的な意識の変容もとらえることができた。これらのことから,本研究で使用したATプログラムは,ICT利用時の人間関係トラブルを予防・回避する一助となると考えられる。
|