Research Abstract |
知的障害のある生徒へのパソコンを活用したデザイン作業ではレイアウト等の指導は感覚に頼る部分も多いため,知的障害生徒への指導は容易ではない。こうした指導において筆者らはこれまでA5版サイズの用紙に印刷し製本したイーゼル型のマニュアルを使用し効果を上げることができた。このマニュアル作成において、近年身近なものとなったタブレット型コンピュータを使用し、デザイン作業マニュアルの電子化をすれば、タッチパネルを使った直感的な操作が行え、より効果が上がるのではないかと考えた。 そこで、本研究ではタブレット型コンピュータを使用し,パソコンでのデザイン作業マニュアルを電子化および活用することで,生徒のデザイン作業における作業時間の短縮および参照行動に変化が見られるのかということについて検討を行った。マニュアルはプレゼンテーション用ソフトを活用し、スライドショーのアニメーション効果の利用も行い、マウスポインタの移動なども視覚的に理解できるよう配慮した。検証を行う授業の題材はメモ帳の表紙デザインとした。対象生徒の作業の様子のビデオ記録を行い、印刷した冊子型のマニュアルとタブレット型コンピュータで電子化したマニュアル使用の作業について、(1)作業にかかる時間、(2)作業中のマニュアル参照の状況について比較を行った。その結果、作業にかかる時間の短縮が認められた。また、作業マニュアルの参照状況としては冊子型のマニュアルの場合はページめくりのミスや注目点がわからず考え込む様子が見られたが、電子化したマニュアルにおいてはページをめくった後の作業手順の遂行にミスが見られなくなった。 こうしたことからタブレット型コンピュータを活用したマニュアルの電子化は直感的な操作ができるだけではなく、アニメーション効果の利用等により視覚的にわかりやすくなり、知的障害のある生徒に作業手順を指導する上で有効な手段であることが示唆された。
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