1.研究の目的 本研究は、知的障害児等、視覚や視覚認知に問題を持つ子どもの視覚的認知を評価する方法を検討することを目的としている。 2.研究方法 対象児:特別支援学校(知的障害)中学部在籍の生徒5名(中1~中2、療育手帳A2~B2、視力0.5以上)、およびモニターとして高等学校在籍の弱視生徒1名(高2、視力0.15)に協力を求めた。 方法:デジタルデバイス(iPad2、以下DDと表記)を用いて4つの課題を実施した。課題1は直径約78mmの円の中央に提示された黒いドット(直径約0.3mm~1.8mm、8段階)の有無を答えるもので、DDをタップするごとにドットが大きくなる。課題2ではドットが小さくなる。課題3はドットの大きさがランダムで、課題1の方式と、左右2つの円(課題1と同じ)の一方にドットを提示し、どちらにあるかを口頭または指さし等で答えるものの2種である。課題4は中央の注視点を見て、DDをタップすると上下左右にドット(大きさは約0.5mm、0.8mm、1.8mm、注視点からの距離は約19mm、38mm、57mm)が約0.25秒間提示され、ドットの見えた方向を口頭または指さし等で答えるものであった。 3.研究成果 知的障害生徒について、課題1~課題3では、ドットの有無等、課題内容を理解させる練習が必要であった。課題はDDを用いて繰り返し確認することができ、認知できるドットの大きさが測定評価できた。また、DDの操作を自ら行い、自発的に取り組める利点も明らかになった。課題4では、ドットに気づかないことで、視野の中で苦手な方向が示唆され、授業などの支援の参考になった。弱視生徒については、見える最小ドットの大きさや視野がモニターできることが分かった。DDを用いて約20分程度で全課題を終えることができ、簡便な方法で見る力(視覚的注意、視野など)の評価に役立てられるようになった。
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