Research Abstract |
【緒言】油脂の法科学的分析手法として固相マイクロ抽出(SPME)装置を用いた手法が有用であると報告してきたが,この手法はSPMEファイバーにとって過酷な条件となっていることから,その劣化や破損のリスクが大きく,決して経済的とはいえない。そこで,SPMEのファイバー部分をスチール製のマイクロコイルに置き換えることにより,高温や有機溶剤に対する強度・耐性を増すことができ,手軽にガスクロマトグラフ(GC)への導入が可能になるものと考えられることから,装置を試作し,その有用性を検討した。 【実験】本研究に使用するデバイスは,SPMEのファイバー部分をマイクロコイルに置き換えたものを試作する。作成法として,マイクロコイル(ステンレススチールの密線コイル:線径約0.1mm・外径約0.3mm・長さ約1cm)をピアノ線(外径約0.3mm・長さ約8.5cm)に結合し,これを市販のSPMEのファイバー部分と入れ換えた。試作したデバイスを用いて油脂の法科学的分析を行い,従来のSPMEで得られた結果と比較した。また,医薬品である錠剤など固形試料の表面にマイクロコイルを接触させてのサンプリングを行い,それらの成分のGC測定を行った。 【結論】サンプリングとGC導入のための装置として,SPMEのファイバー部分をマイクロコイルに置き換えた試作装置は,液体試料に対しては毛細管現象によるサンプリング,微粉末試料やペースト状の試料に対してはマイクロコイルの間隙に挟み込むことによるサンプリングが行え,通常のSPMEと同様にGCへの直接導入が可能となった。マイクロコイルの材質がステンレス鋼であるため,SPMEのファイバーと比較し耐熱性・耐有機溶剤性に優れ,とくに微量な油脂の法科学的分析手法に用いる装置として有用であった。
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