Research Abstract |
機能性色素であるフタロシアニンを用いて細胞の微小なpH変化を色や吸収波長の違いによって瞬時に判断する色素を開発することとした。フタロシアニン環には環の内側に4つ,外側に4つの窒素原子がり,内側の4つは金属に配位している。そのため外側の4つの窒素を高感度弱塩基として利用することを考えた。すなわち,フタロシアニン核のペリ位に数多くのフッ素,特にトリフルオロエトキシ基を導入することによって,フタロシアニン核内部を電子欠乏状態にすれば,窒素の塩基性度は極めて低下するため,超弱塩基として機能するはずである。そこで,1,4-トリフルオロエトキシフタロニトリルを出発原料に用いて,塩化亜鉛および塩基の存在下,加熱環流したところ,目的のαトリフルオロエトキシ置換型フタロシアニンが収率よく得られた。この色素は緑色であった。次にこの色素をクロロホルム溶液にし,紫外線吸収スペクトルを測定したところ,濃度を薄めていくと吸収スペクトルが大きく変化することを見いだした。これは,クロロホルム中のごく微量の酸を検知したためであると考え,ピリジンを1滴添加するとスペクトルは濃度の濃い状態と同じ紫外線吸収スペクトルを示した。一方,濃度の濃い状態のものにトリフルオロ酢酸を1滴添加したところ,今度は希釈した状態と同じ紫外線吸収スペクトルを示した。これらの結果は,希釈するという,ごく微量の酸の存在によって紫外吸収スベクトルが著しく変化したことを意味している。この知見を利用し,がん細胞を用いて実験を行った。即ちH929を適当量とり,PBSで洗浄後,PBS1mlに浮遊させ,フタロシアニンを5μ添加した。コントロールとして、PBSのみと比較した。しかし,細胞添加の方が,少し色がつく程度であった。続いてK562細胞にフタロシアニン10μlを添加した。また,細胞を溶解させるために界面活性剤を10μlを添加した。その結果,細胞のみは,標準よりも強い青色を示すことがわかった。
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