Research Abstract |
研究の目的:沿岸域において底生生物数の激減等の要因として,底泥中での硫化物の生成が影響を与えるとの指摘がある.そのため,硫化物濃度が環境指標の一つとして用いられ現地で試料を採集し,室内で分析する手法が一般的である.しかしこの手法では,多大な労力・時間を要するため調査間隔の拡大が必要となり,底質の時・空間変動を捉えることは困難である.そこで硫化物濃度の推定手法の開発を目的とし,土色計及びデジタル画像の表色系と硫化物濃度の算出手法について検討した. 研究方法:採集位置は,硫化物濃度0.31~0.02mg/gdryを示す八代海22地点とした.1地点当り2個の不撹乱の表層試料を採集した.採集直後に表面をデジタルカメラの接写モードで撮影し表面の3~5ヶ所で色相を土色計で計測した.硫化物濃度の試料は,表層より5cmまでを採取し亜鉛アンミン溶液で固定後,冷暗保存にて持ち帰り分析依頼した.土色計のマンセル・L^*a^*b^*表色系の平均値及びデジタルカメラ画像より求めた値と硫化物との関係を検討した.表面のデジタル画像は,撮影画像から日射の影響等を除去した画角を用いた.データ処理は,画像のRGB平均値から各表色系に変換し,主成分分析により共通要素を抽出することで説明変数を決定した.硫化物濃度推定式は,重回帰分析で残差平方和を基準とした段階的手法による最良回帰式とした. 研究成果:土色計のマンセル色相及びL^*a^*b^*表色系と硫化物濃度の関係より,各表色系は回帰直線周辺に分布した.データの範囲内で相関係数rが0.7以上となり,表色系と硫化物濃度には,有意な関連性がある.デジタル画像の表色系を主成分分析した因子負荷量の分布からL^*,a^*,b^*,Hを説明変数としたrは,土色計値と比較し低い値を示した.推定式の説明変数としてa^*,b^*,L^*が選定され,重相関係数Rは,土色計0.79,デジタル画像0.52を示す.以上のことから表色系より,硫化物濃度は推定可能であることを示せた.
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