Research Abstract |
サンゴの体表で生活する無腸動物ワミノアにはSymbiodiniumとAmphidiniumの微細藻類が共生しており、これらは卵母細胞に取り込まれて垂直伝搬する。卵巣成熟の進行に伴う共生藻獲得過程の観察手法を確立するためにワミノアをサンゴから分離して単独飼育する方法を模索した。ワミノアは冬期の海水温23℃で飼育すると卵巣が発達する。卵巣の発達は卵巣の形成部位によって、I期、II期、III期の3つのステージに分けられる。II期の卵巣(初期卵黄形成域)内の卵母細胞には共生藻は含まれていない。III期の卵巣に形成される後期卵黄形成域で,共生藻は卵母細胞に取り込まれる。市販されている稚魚用の試料(冷凍ワムシ、アルテミア脱殻卵、アルテミア幼生)を与え、II期のワミノアが餌を取り込む様子を観察した。その結果、ワミノアはアルテミア卵を比較的良く取り込んだが、一旦体内に取り込んでもペレットとして吐き出した。ワムシの取り込みはアルテミア卵に次いで多かったが,こちらも吐き出されることが多かった。アルテミア幼生はアルテミア卵やワムシほどには取り込まれなかったが、一旦取り込まれると吐き出されることなく消化吸収された。このことから、餌として与えるにはアルテミア幼生が適していることが明らかになった。後期卵黄形成期の卵巣を持った個体を選び出し,Ca^<2+>/Mg^<2+>除去海水中で組織を解離し、組織細片を濾過飼育海水に戻してから、蛍光顕微鏡によりG励起で観察すると、共生藻を保持する細胞を生きたまま観察できることが明らかになった。また、酢酸グリセリン海水中でワミノア体組織をピペッティングにより細片化すると、卵巣の形態を保ったまま単離できることを見いだした。この手法を用いてII期の卵巣内の卵母細胞を観察した結果、卵巣の中で細長く円筒状に伸長した状態で卵の形態が保持されていることが明らかになった。以上の成果は、ワミノアの共生藻「家畜化」開始プロセスを研究する基盤となるものである。
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