富士山におけるホシガラスの生態およびゴヨウマツの更新動態に関する研究
Project/Area Number |
23924018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
生物学Ⅱ(動物)
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Research Institution | NPO法人自然環境アカデミー |
Principal Investigator |
西 教生 NPO法人自然環境アカデミー, 学芸員
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Project Period (FY) |
2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | ホシガラス / 貯食行動 / ゴヨウマツ |
Research Abstract |
富士山北麓でホシガラスの貯食行動について、8~12月に定点調査により亜高山帯針葉樹林内(以下、林内)、森林限界上部のパッチ状植物群落内(以下、パッチ)、パッチエリアの裸地、裸地の4箇所のどこに貯食しているのかを記録した。調査は14回(計71時間)おこない、林内に62回(43.1%)、パッチに59回(41.0%)、パッチエリアの裸地に7回(4.9%)、裸地に16回(11.1%)の貯食行動が確認された。さらに、1)ホシガラスは8月下旬~11月下旬にゴヨウマツの種子を貯食していること、2)ゴヨウマツの種子は約2~10km離れた場所から運んでいると推定され、季節によってその距離が異なること、3)約9haの範囲に少なくとも5個体が貯食に訪れ、同時に出現することがあっても排他的な行動は見られないこと、4)その年生まれの個体(幼鳥)も貯食をすることが明らかになった。 季節によって散布距離が異なるのは、種子の熟す時期が標高によって違うからだと思われる。ホシガラスは8~9月は低標高域、10~11月は高標高域のゴヨウマツを利用していることが示唆された。すなわち、亜高山帯上部に見られる稚樹集団は、山地帯から亜高山帯にかけて点在している親木から運ばれた種子に由来していることが予想される。 種子を貯食し、それを長期的に利用するためには優れた記憶力が必要になる。日本産の鳥類で貯食をする種はいくつか知られているが、その中でもホシガラスは最も多くの場所に貯食すると考えられる。その年生まれの個体も貯食をしていたことは注目に値する。なぜなら、球果から種子を取り出し、運び、貯食場所を選定して埋めるという一連の高度な行動を巣立ち後3カ月の個体がやっており、少なくとも種子を運ぶこと、貯食場所を選定することは単独でおこなっていた。つまり、貯食行動の多くの部分は経験によって獲得されるものではない可能性がある。 調査地に見られるゴヨウマツの稚樹の相対生長量の平均値は、パッチと裸地では有意差があり、パッチのほうが大きかった。ホシガラスはパッチに全体の約40%を貯食していたことから、ゴヨウマツの垂直分布の拡大に大きく貢献していると考えられる。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)