Research Abstract |
1.研究目的 本研究では,栽培にともなう廃棄物が少ないサツマイモの養液栽培法を開発し,地下部バイオマス(塊根)と地上部バイオマスからのエネルギー回収をおこなうことによる,資源循環型の屋上・壁面緑化用栽培システムを確立する。 2.研究方法 供試植物は,巻蔓性があり,屋上・壁面緑化に適するサツマイモ品種ベニオトメを使用した。培地利用型養液栽培試験について,従来はロックウール培地(以下RW)を使用した養液栽培を行ってきたが,RWは栽培終了後,1植物体あたり,267gのRWが産業廃棄物になるため,繰り返し使用できるハイドロボール培地(以下HB)による栽培方法に変更して,環境負荷の低減に取り組んだ。 3.研究成果 (1)栽培について 塊根収量は1植物体あたり,RWの場合162.2g,HBでは238.0g(乾燥重量)であり,HB培地による養液栽培法の有効性を示すことができた。1植物体あたりに投入した培養液は,全栽培期間で67.0Lであり(全給水量1栽培した植物数n=96より算出),上水1kgあたりのLC-CO_2は,1.87×10^<-4>CO_2-kg(国立環境研究所,産業連関表による二酸化炭素排出原単位,1995)から,投入された水道水のLC-CO_2は,1植物体あたり1.25×10^<-2>CO_2-kgであった。また,1植物体あたりの栽培において,HB容量3L(乾燥重1.35kg),ポリエチレン製のネット1袋(7.9g)が必要であるが,これらは繰り返し使用できることからLC-CO_2の計算からは除外した。また,投入された肥料成分は,1植物体あたり,全窒素17.4gおよびその他の成分であるが,本研究では,これら肥料成分についての環境影響評価はおこなっていない。 (2)バイオマスによるCO_2固定 生産された総バイオマスは,1植物体あたり乾燥重で983.5g(塊根238.0gを含む)である。これらのバイオマスが大気中のCO_2を吸収固定したと考えると,固定されたLC-CO_2は1植物体あたり1.44CO_2-kgである。 (3)生産されたバイオマスからの等ネルギー回収 屋上緑化で生産されたバイオマスからのエネルギー回収の手法が確立できれば,地球環境への貢献が期待できる。本研究による栽培方法によって,1植物体が生産した塊根(乾燥重238.0g,生体重1012.1g)をエタノール発酵することにより0.13kgのエタノール回収が見込まれる。また,地上部および細根(乾燥重745.5g)をメタン発酵させることにより,メタン69%を含む溶液が246Lの生成が見込まれる。当山ら(1984)の研究を参考にした。 4.今後の課題 栽培にかかわる環墳負荷,植物によるCO_2固定と冷却効果,バイオマスからのエネルギー回収についての評価を継続する。 【参考資料】 国立環境研究所,産業連関表による二酸化炭素排出原単位1995. 当山清善ら,甘藷茎葉のメタン発酵:第2報大型発酵槽を用いた発酵,琉球大学農学部学術報告No.31,(1984/11) 当山清善ら,酵素剤利用による甘藷芋からのエタノール生産,琉球大学農学部学術報告No.31,(1984/11)
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