クマネズミの環境適応戦略と日本におけるスーパーラットの分布
Project/Area Number |
23925017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
農学・水産学
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新海 秀史 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2011: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Keywords | ワルファリン / VKOR / クマネズミ |
Research Abstract |
日本における野生のクマネズミは、経済的な被害だけでなく、衛生的な被害ももたらすため、獣医学領域でも非常に問題となり駆除の対象となっている。クマネズミの駆除は、粘着シート等の物理的な方法では限界があるため、ワルファリンをはじめとする血液凝固阻害剤が殺鼠剤として広く用いられている。しかし近年、ワルファリンに抵抗性を持つクマネズミ(スーパーラット)が日本各地で確認され、その駆除が難航し問題となっている。そこで、本研究ではクマネズミの殺鼠剤に対する環境適応力とそのスーパーラットの分布について検討し、野生ネズミ駆除をより円滑に行うことを目的とした。 日本の18都道府県からネズミの駆除が困難な地点より約200匹の野生ネズミを捕獲した。これらのネズミの尾よりゲノムDNAを抽出し、ワルファリンの標的酵素であるビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)をコードする、VKORC1遺伝子のアミノ酸シークエンス解析を行ったところ、約4割程度の個体はワルファリンに感受性を示すワイルドタイプのVKORC1遺伝子を有していたが、残りの6割程度の個体はアミノ酸に変異を有する個体であった。'またその変異は9種類に及び、分布は広範に及んだ。一部の個体に0.025%ワルファリン含有餌を用いたワルファリン抵抗性試験を行ったところ、ワイルドタイプの個体では試験開始約10日で死亡したが、変異を持つ個体群の中には試験開始30日後でも死亡せずに生存し続け、ワルファリンに抵抗性を有する個体が確認された。またVKORC1に変異が存在してもワルファリンに感受性を示す個体もいた。 抵抗性を確認されたVKORC1の変異パターンは複数存在し、またその分布も複数県にまたがるものもあり、ワルファリンに抵抗性を有するクマネズミは日本全国に広く分布していることが考えられた。ワルファリン抵抗性試験は、生きたままネズミを捕獲する必要があり、またその試験も2か月以上の期間を有するため、非常に労力を要する試験であるが、この遺伝子を用いた判定では、ゲノムDNAが抽出可能な状態であれば、たとえそれが死体であったとしても短期間で抵抗性の有無が判定できるため、非常に有用であると考えられる。
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Report
(1 results)
Research Products
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