Research Abstract |
本研究の当初の計画では、ラットに5-FUを投与しヒトのCYP2C9に比較的近い分子種であるCYP2C11の変動をLC-MS/MSを用いて測定する予定であったが、CYP2C9とCYP2C11の発現制御が完全に一致しない可能性を考慮し、ヒトのヘパトサイトで直接CYP2C9を測定する方針に変更した。この目的のためには、ヒトのヘパトサイトを長期間培養してもCYPの発現量が保たれている必要があることから、数種類の三次元細胞培養系を検討した結果、Scivax社のNano Culture Plateを用いた場合にスフェロイドの形成が安定している、および培養後の細胞の回収が容易であることを確認し採用した。 ヒト凍結肝細胞を三次元培養後に回収し、ホモジネート後の遠心分離上清をDTT、およびiodoacetamide処理し、引き続き有機溶媒処理で沈殿させたタンパク質を再び溶解し、最終的にトリプシン分解により生成したペプチド断片をLC-MS/MS(Waters,Xevo)により定量した(ESI,MRM法)。内部標準としては、あらかじめ生ずると予測される断片ペプチドをトリプシンの切断部位認識性から構造推定して化学合成し、これを固定化トリプシン存在下重酸素水中でインキュベートすることで同位体標識して用いた。その結果、ヒト肝細胞中のCYP2A6,2B6,2C9,2D6,2E1,3A4,シトクロームb5、NADPHシトクロームP450還元酵素、およびミクロソームマーカー蛋白としてMTTPおよびBIPを一斉分析することに成功した。なお、CYP1A1,1A2,1B1,2C8,2C18,3A5,および3A7は検出限界以下であった。現在、5-FU存在下でヒト肝細胞を三次元培養し、発現量の変動するCYP分子種を検討中である。本院で5-FU系の治療を受けた患者のCYP2C9の基質薬、ワルファリン、フェニトイン、ジクロフェナク、セレコキシブ、グリメピリドの服用状況、効果、副作用の発現状況の調査も現在進行中である。
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