Research Abstract |
【研究目的】近年,造血幹細胞移植において,移植片対宿主病(GVHD)や生着不全の予防に対するミコフェノール酸(MPA)の有効性が報告されている.しかし,造血幹細胞移植後の患者におけるMPAの血中濃度モニタリング(TDM)については,適切な採血ポイントをはじめPK-PDの関係が未解明とされている.そこで,造血幹細胞移植患者を対象にMPAのTDMを行い,その有用性について検討した. 【研究方法】ミコフェノール酸モフェチル(MMF)服用患者9名(骨髄移植3名,臍帯血移植6名)を対象に,内服開始後1,3週目における内服前,内服1,2,4時間後のMPA血中濃度を測定した.また過去にMPAのトラフ血中濃度を測定した骨髄移植患者13名を対象に,血中濃度と急性GVHD発症の有無との関連についてレトロスペクティブに調査した. 【研究成果】MPA血中濃度は吸収相での変動が大きく,個体内変動が大きい症例も見られた.造血幹細胞移植患者は,移植前の大量化学療法や全身放射線照射により,移植後は消化管粘膜障害や肝機能障害の状態にある場合が多い.これら要因が,MPA体内動態の個体間・個体内変動の要因である可能性が考えられた.MPAのAUCは,内服1および2時間後値と良好な相関を示したが,トラフ値との相関は十分ではなかった。 またMPAトラフ血中濃度はGVHD有無の患者間で有意差はなかったことから,トラフ値に加えて,内服1もしくは2時間後の血中濃度を測定することが,薬物暴露量の目安として有用であることが示唆された.MPA血中濃度経時モニタリング患者9名のうち,骨髄移植患者全例およびMPAのAUCが最も低い臍帯血移植患者において急性GVHDが認められた.骨髄移植は臍帯血移植と比較してGVHDを発症する割合が高いため,骨髄移植症例ではMMFの増量を考慮する必要性が示唆された.
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