Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
シロリムスは国内未承認の免疫抑制薬であるが、海外で臓器移植を受けたり、他の薬剤では免疫反応のコントロールが十分でない場合に、個人輸入により使用されることのある薬剤である。本剤は治療域が狭く、重篤な口内炎などの副作用が見られるうえ、体内動態の個人差も大きいことから、TDMによる投与量の厳密な調節が必要である。そこで本剤について、精度、真度に優れる標準法を確立し、臨床で利用可能な迅速分析法へと改良し、最終的に外来患者のTDMに利用可能な分析法を構築することを目的として研究を実施した。1.シロリムスやIS(アスコマイシン)のイオン化を抑制する分析試料中のリゾリン脂質の除去についてヒト全血に硫酸亜鉛/メタノール混液を加えて除タンパク処理した試料、除タンパク処理後ODS系のBond Elut C18(Varian)で固相抽出し、無機物や親水性爽雑物を除去した試料、さらにHybrid SPE-PPT(Sigma-Aldrich)にて固相抽出した試料に、既知量のシロリムスおよびISを添加し、LC/ESI-MS/MS分析した。その結果、除タンパク処理のみの試料では、シロリムスおよびISともにピーク面積が標準試料の2.5分の1以下となり、Bond Elut C18処理した試料ではISは標準試料と同程度まで回復したが、シロリムスは標準試料の6割程度となり、Hybrid SPE-PPT処理を加えることでようやく標準試料と同程度のピーク強度が得られることが判明した。すなわち、ヒト全血を硫酸亜鉛含有のメタノール溶液で除タンパクした後、Bond Elut C18で無機塩や水溶性爽雑物を除去し、さらにHybrid SPE-PPTカートリッジによりリン脂質を除去する一連の前処理法を用いることで、マトリックス効果の原因となるイオン化抑制因子を完全に除去できることが明らかとなった。2.確立した血中シロリムス定量法の分析法バリデーションについて本法は想定される血中濃度範囲を含む05~50ng/mLで良好な直線性を示し、満足し得る精度と真度を有することが判った。また、10名の健常成人から採取した血液を用いてマトリックスの影響を精査した結果、本法により内因性爽雑物の影響をほとんど受けない信頼度の高い定量が可能であることが明らかとなった。
All 2011
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (11 results) Book (2 results)
Journal of Chromatography B
Volume: 879 Pages: 968-974
Volume: 879 Pages: 987-992