Research Abstract |
1.目的 RASにおいて産生したAngIIは,前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞への分化のトリガーとなることが知らている。 脂肪蓄積抑制効果の機序としては,前駆脂肪細胞の分化抑制または脂肪合成の抑制が考えられる。 そこで本研究では,RAS阻害剤(ACEI及びARB)投与によるラット体重増加抑制効果と各脂肪織重量の減少は脂肪細胞の分化抑制に起因するか脂肪形成(肥大化)抑制に起因するか脂肪蓄積抑制機序の解明を目的とする。 2.方法 1)Sprague-Dawley(SD)ラットに,ACEIsカプトプリル:5mgkg,20mg/kg、各群n=5),ARB(ロサルタン:5mg/kg,10mg/kg,各群n=5)を毎日1回腹腔内投与し体重の変化を測定した。投与開始時のラット体重は内蔵脂肪が十分形成されていない体重150g群および内蔵脂肪組織が十分形成される体重200g群の各ラットで体重が350gに到達するまで行った。その後,各組織重量,腹腔内脂肪および副睾丸脂肪組織の重量を測定した。 2)各群の腹腔内脂肪組織をコラゲナーゼ処理後,組織重量当たりの細胞数や形態変化を計測した。 3.結果 1)体重約150g群では,captopril高濃度投与群で著明な体重増加抑制が認められたが、losartan高濃度投与群では既報と同様に著明な抑制は認められなかった。一方,体重約200g群においては,captopril高濃度投与群で体重増加抑制率は11.0±6.4%と、losartan高濃度群等に比べ著明な抑制率を示した(p<0.01)。 その後,各組織重量を測定した結果,150g群では,captoprilおよびlosartanいずれの投与においても内蔵脂肪および副睾丸脂肪の重量の減少が認められ,その効果は特に内蔵脂肪においてcaptopril(17.6~38.1%)がlosartan(11.4~22.3%)より顕著であった。副睾丸脂肪ではいずれも10%以上の増加抑制は認められたが,両群に著明な差は認められなかった。一方,200g群では、内蔵脂肪がcaptopril投与群において著明に抑制され(31.8~35.9%)、losartan投与群(4.3~20.1%)よりその効果は顕著であった。副睾丸脂肪では、いずれの投与群においても脂肪組織重量の減少は顕著ではなかった。 2)各脂肪組織をコラゲナーゼ処理し顕微鏡下で前駆脂肪細胞および成熟脂肪細胞の確認を検討したが、十分な細胞数を得ることは出来なかったため、現在直接脂肪組織を染色し、各組織の形態学的な測定を試みている。
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