江戸時代丸散剤処方の解析―薬用植物の伝統的利用法の探索―
Project/Area Number |
23929021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
薬学Ⅳ
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鈴木 達彦 東京理科大学, 薬学事務課, 嘱託技術員
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Project Period (FY) |
2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥200,000 (Direct Cost: ¥200,000)
Fiscal Year 2011: ¥200,000 (Direct Cost: ¥200,000)
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Keywords | 丸散方 / 漢方 / 吉益東洞 |
Research Abstract |
研究目的:江戸時代、独自の体系を築いた我が国の伝統医学では今日一般的な湯液方の他に丸散方も広く用いられた。本研究では湯液方に比べあまり研究の対象にならなかった丸散方に注目し、その処方構成や使用法を明らかにすることを目的とした。 研究方法:江戸時代の丸散剤の処方集を解析し、医家による治験録からその使用意義を求めた。当時の医家は後世派と古方派に大別されるが、後世派については『家伝預薬集』を、古方派は吉益東洞の処方集および治験録を対象とした。 研究成果:後世派の主流であった曲直瀬流の丸散剤の処方集の『家伝預薬集』の各種版本、関連資料を検討し、『玄朔常合置方又万聞書』が本書の原書の1つであることを明らかにした。また、一門の長沢道寿の『医方口訣集』に収載される丸散方が本書と共通しており、曲直瀬流の中に丸散方が徐々に採り入れられる過程で本書が編纂されたことが明らかになった。 一方、古方派の吉益東洞は十二律方という12種類の丸散方を用いた。処方集は多種の写本として伝わり、それらを比較検討した結果、25処方を収載する原書に近い写本を見出した。本写本から十二律方は高弟の村井琴山らの関与もあって東洞の晩年に整理されたことが明らかになった。東洞の死後、その門下によって解説が加えられた写本についても整理した。東洞の治験例の検討からは、晩年に『傷寒論』の湯液方と丸散方を併用する治療体系を確立させたことが明らかになった。東洞の医学観においては留飲や宿食といった不消化物が体内で毒となって疾病が生じ、これに外因が影響して様々な症状を呈するという万病一毒説があり大黄などの下剤や甘遂、商陸などの駆水剤は病の根源となる毒を排除する目的で丸散方に配合されたと考えられる。東洞の医学においては丸散方の整理、湯液との併用法の確立、万病一毒説の医学理論の体系化は並行して行われ、丸散方が重要な意義を持っていたことが明らかになった。 本研究の成果は丸散方のさらなる研究の契機となり、江戸文化への理解にも一助となると期待される。
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Report
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Research Products
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