Construction of physical property correlation based on entropy and creation of new thermal control materials
Project/Area Number |
23H05457
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section D
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島川 祐一 京都大学, 化学研究所, 教授 (20372550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 大介 京都大学, 化学研究所, 准教授 (40378881)
後藤 真人 京都大学, 化学研究所, 助教 (10813545)
木村 滋 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主席研究員 (50360821)
新田 清文 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 研究員 (00596009)
佐藤 和則 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60379097)
山下 智樹 長岡技術科学大学, 産学融合トップランナー養成センター, 特任准教授 (60793099)
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Project Period (FY) |
2023-04-12 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥202,540,000 (Direct Cost: ¥155,800,000、Indirect Cost: ¥46,740,000)
Fiscal Year 2024: ¥49,270,000 (Direct Cost: ¥37,900,000、Indirect Cost: ¥11,370,000)
Fiscal Year 2023: ¥28,600,000 (Direct Cost: ¥22,000,000、Indirect Cost: ¥6,600,000)
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Keywords | エントロピー / 熱量効果 / 遷移金属化合物 / 構造物性相関 |
Outline of Research at the Start |
本研究は持続可能な社会の構築に向けて解決すべき課題の一つである「熱制御」を実現するための革新的新材料の開発を目指すものである。特に、圧力や磁場などの外場を印加することで熱制御を実現する熱量効果に注目し、遷移金属化合物を中心に巨大な熱量効果を示す新物質の探索とそれを引き起こす新たな学理を構築を目指す。研究を効率的に遂行するために「物質合成」-「構造・物性評価」-「理論計算」からなる組織を構成し、各チームの有する特徴的かつ最先端な手法が有機的に連携することで新しい学際的物質・材料研究を展開する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、持続可能な社会の構築に向けて解決すべき課題の一つである「熱制御」を実現するための革新的新材料の開発を目指している。特に、圧力や磁場などの外場を印加することで生じるエントロピー変化を利用して熱制御を実現する熱量効果を示す材料を対象として研究を進めてきた。注目したのは、電荷-スピン-格子が強く相関した遷移金属化合物の相転移であり、転移に伴うエントロピー変化を利用した新規な熱制御材料を創製することを目的としてきた。 研究初年度は電荷転移を起こす遷移金属酸化物に注目して、巨大熱量効果を示すNdCu3Fe4O12やBiCu3Cr4O12に加えて、大きな格子変形を示す(Bi,Ln)NiO3の熱物性を測定し、その特性比較を行った。その結果、大きな熱量効果を発現するためには、電荷‐スピン‐格子が強く相関した物質系において、電荷転移・磁気転移・格子変形が同時にかつ1次的に起こることが重要であることが示された。 潜熱を生じる相転移構造評価に関しては、SPring-8のBL13XUにおいて、その場ナノビームX線回折システムの構築に取り組み、電圧パルスに対する格子変形の応答を逆格子空間マップ測定から決定できることを確認した。また、相転移での電子状態解析に向けて3d-L端、およびO-K端測定用の蛍光検出器の調達および立ち上げを行った。 また、理論計算からのアプローチとして、交換相互作用の温度依存性を取り入れたモンテカルロシミュレーション法を開発し、典型的な磁気冷凍材料であるLa-Fe系のエントロピー変化が再現できることを実証した。さらに、第一原理計算を用いた探索シミュレーションでは、既知の安定構造を再現でき、第一原理計算を汎用機械学習ポテンシャルに置き換えたシミュレーションでも同様の安定構造を見つけ出すことが確認でき、これにより構造探索計算の高速化が可能であることが実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電荷転移を起こす幾つかの遷移金属酸化物を高圧合成法や低温トポタクティック物質変換を駆使することで合成することに成功し、比熱を含めた熱物性評価を行い、さらに圧力や磁場を印加して熱量効果を再現性良く測定することに成功した。特に、電荷転移と磁気転移が一致した系と分離した系での測定を行ったことで、巨大な熱量効果を発現するためには、電荷‐スピン‐格子が強く相関した物質系において、電荷転移・磁気転移・格子変形が同時にかつ1次的に起こることが重要であることが示された。大きな熱量効果発現に向けた基本学理の構築に向けて熱変化と相関する物性変化を明らかにすることに注目してきた中で、異なる特徴を示す物質が得られたことで、今後の研究を進めるうえでの重要なモデル物質を見出すことができたと考えている。 構造評価に関しては、SPring-8での放射光X線を使った多角的構造評価手法と電子状態評価のシステムの立ち上げが順調に進み、設計通りの性能が得られることが実証された。特に熱制御特性を引き起こす相転移を構造変化と電子状態変化の両観点から評価するためのシステム構築が進んでいることから、今後の巨大なエントロピー変化を示す材料の評価に向けて順調に準備が進展していると考えている。 また、理論計算からのアプローチも新たなモンテカルロシミュレーション法を開発し、既存磁気冷凍材料のエントロピー変化において本手法が適応可能であることを実証することができた。さらに、構造探索計算では、第一原理計算に加えて、第一原理計算を汎用機械学習ポテンシャルに置き換えたシミュレーションを行うことで計算の高速化が可能であることを確認できた。合成を担当する京都大学グループが注目している新たな化合物群での安定構造探索を行う準備が構築されてきていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規な熱制御材料の探索として、引き続き、遷移金属化合物を中心とした物質合成とその熱物性評価を中心とする実験を進めていく。特に、巨大なエントロピー変化を起こすためには、電荷‐スピン‐格子が強く相関した物質系において、電荷転移・磁気転移・格子変形が同時にかつ1次的に起こることが重要であることから、電荷転移に注目すると、電子的な不安定性を内在する異常高原子価イオンを含んだ化合物に注目する。昨年度の研究からは多段の電荷転移を示すような物質も新たに見つかっており、おのおのの転移における物性変化とそれに伴うエントロピー変化を実験的に明らかにしていく予定である。 巨大な熱応答を示す物質の開発に向けて熱物性を詳細に議論する必要があり、そのためには精密な構造評価と電子状態解析が重要となる。特に、3d遷移金属元素の化学状態の更なる理解のためには軟X線の共鳴/非共鳴の発光分光計測が有効である。そこで蛍光XAFSと発光分光の同時計測システムの構築を進めていく予定である。 物質探索においては、定比組成化合物の安定構造の探索シミュレーションが機能することが実証できたので、今年度は、酸素欠損などの不定比化合物にも対象を広げる。SrCoO(3-x)などがモデル物質となるか検討する。さらに、エントロピー変化の理論計算では、磁性金属のみならず、遷移金属化合物に計算対象を広げていく予定である。多くの酸化物が報告されており、また元素置換による物質バリエーションが多いペロブスカイト構造物質を計算対象とする。
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Report
(3 results)
Research Products
(36 results)