Project/Area Number |
23K00132
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
木村 直弘 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (40221923)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 多様における統一 / 美学 / 西洋近代美学受容 |
Outline of Research at the Start |
大正期日本では、美学関係の専門書や啓蒙書が数多く出版されていたが、それは従来の西洋近代美学受容史研究では注目されてこなかった。しかし、申請者のこれまでの研究により、当時の美学への関心の高まりの要因として、単なる大正教養主義だけでなく、「多様における統一」という考え方への共感があることがわかってきた。そこで本研究では、改めて当時の哲学・心理学・宗教学・美学関連の文献を博捜して「多様における統一」が当時の思想的トポスであることを確認し、このトポスが当時の美学・芸術論および芸術実践に与えた影響関係について照射することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大正期に公にされた美学・芸術学、哲学、心理学(心霊学を含む)、そして宗教学(あるいは宗教)の文献を、啓蒙書も含めて網羅的に調査し、これらの学問分野 に通底する思想的トポスとしての「多様における統一」受容の実態と、その概念が当時の芸術論にどのように「役立つもの」として受容されたかについての解明にある。たとえば大正期における西洋近代美学受容は、阿部次郎の『美学』(岩波書店、1917年)のように、冒頭、単なるリップスの美学説の紹介ではないとことわりつつも、その感情移入説の立場に全面的に依拠している場合が多い。そこで、改めてリップス『美学大系』 だけでなく、当時氾濫していた日本人による美学書(鼓常良、稲垣末松、金子馬治、石田三治、大西克礼、安島健、渡辺吉治など)や西洋美学関係の訳書を収集し、それらにおける「多様における統一」に関する言説を精査し、各説においてそれがどのような位置づけをなされているかについて検証を行った。特に民藝運動を主導した柳宗悦の美学における「一と多」論は、新プラトン主義的な宗教論から発し老子的「無為」論を取り込みつつ、工藝美を他力美として措定するもので、たとえば同時代人宮澤賢治の思想とも通底する「利他」的な発想との関連が注目に値する。また、「多様における統一」という視座から、これらの美学書と当時流行した「人生論」との関連についても看過されるべきでないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
宮澤賢治が自筆で傍線等を付していたリップス『美学大系』について現物閲覧の許可を宮澤家に求めたが、1999年の時点で所蔵されていた現物が現在は見当たらないということで、調査がペンディングになっている。 また、民藝運動まで対象を拡大して想定以上に資料が収集できたため、その調査に時間がかかり、年度内に「多様における統一」を主題とする論文を発表できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、大正期の哲学および心理学(心霊学を含む)における「多様における統一」の位置づけの検証を中心とする。前掲・宮澤賢治はフェヒナーの美学思想でなく、精神物理学にも関心をもっていたが、それは大正10年頃の心霊学ブームと不可分である。実際、今日に至るまでフェヒナーの精神物理学や 実験美学の著作の翻訳はないものの、明治期から実験心理学の先駆として紹介された彼の精神物理学の特徴はその帰納的・実験的方法が彼独自の「唯心論」に依拠しているところにあり、彼の『死後の生』という小冊子は、日本が大きな戦争を経験した明治・大正・昭和、そして平成に至るまで訳書が出されて読み継がれてきている。そこで、フェヒナー、ジェイムズだけでなく、プラグマティズムを代表する哲学者ジョン・デューイにおける「多様における統一」観を中心に、当時日本で出版された多くの哲学書や心理学書を調査して明らかにし、それが心理学的美学や他の諸芸術論にどのように受容されたかを検証し、紀要等に研究成果を発表する。
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