Project/Area Number |
23K00134
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Joshibi University of Art and Design |
Principal Investigator |
田中 理恵子 女子美術大学, 芸術学部, 准教授(移行) (50779105)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 現代キューバ / 音響芸術 / 再構築と創造 / 環境論的アプローチ / 異質性 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近年の自然や社会の環境変化を、音楽の実践から捉えようとするものである。具体的にはキューバ音響芸術を例に、人びとが音環境の創造や伝統音楽の再構築を行う過程で、いかに環境と切り離されたり結びついたりするのかを明らかにする。近年の環境変化の下では、自然や社会との関係性を(再)構築することが課題とされ、音楽は多様なつながりを構築する装置として注目されてきた。しかし人びとの経験に寄り添えば、音楽は均質な一体感を与える訳でも無尽蔵なつながりを形成する訳でもない。これを踏まえて本研究では、環境・社会文化・人間のいずれにも還元されえない、異質性や不均一性を内包した音楽実践の総体を捉えることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年の自然や社会の環境変化を、音楽の実践から捉えようとするものである。具体的にはキューバ音響芸術を例に、人びとが音環境の創造や伝統音楽の再構築を行う過程で、いかに環境と切り離されたり結びついたりするのかを明らかにする。 近年の環境変化の下では、自然や社会との関係性を(再)構築することが課題とされ、音楽は多様なつながりを構築する装置として注目されてきた。しかし人びとの経験に寄り添えば、音楽は均質な一体感を与える訳でも無尽蔵なつながりを形成する訳でもない。これを踏まえて本研究では、環境・社会文化・人間のいずれにも還元されえない、異質性や不均一性を内包した音楽実践の総体を捉えることを目指す。 本研究の対象であるキューバ芸術音楽は、社会変化の下でその様相を多様に変化させながら、近・現代キューバにおける人びとの生の変化をあらわしてきたという特徴を持つ。これを踏まえて本研究では、音楽を社会的に再生産される自明の現象としてではなく、環境変化の下でその場所に「在り続け」、その時間を「よく生きる」ことに向けた実践の軌跡としての音響芸術に注目し、環境・社会文化・人間のいずれにも還元されえない主体なき集合行為の動態を明らかにすることを目的とする。 理論的枠組みとしては、旧来の環境モデル(例えば音響と身体のつながり等)や関係論(例えばイデオロギーや再生産の構造等)を批判的に検討しつつ、環境変化の過程に見られる「異質性の生成や応答」の諸相に注目し、近年主流を成すエコミュージコロジー等の環境論的アプローチを乗り越える為の「切断=創造の民族誌的研究」を新たに提示する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は文献調査研究に注力し、先行研究の課題が浮き彫りとなった。その成果は、現在、論文3件、翻訳書2件、学会発表2件として、各作業を進めており、次年度以降にアプトプットを行う予定である。これにより、既存の理論的課題をより明確に提示することができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、キューバ音響芸術にアプローチするための理論的レビューとして、具体的には、人類学・音楽学の環境モデルや関係論的アプローチの端緒となった1970年代以降の議論を検討し、並行して2000年代以降に欧米圏で主流と成すエコミュージコロジーなどの環境論的手法の比較を積み重ねてきた。その過程において浮き彫りとなった課題は、以下のようなものである。 キューバ音響芸術にアプローチしようとする際、既存の議論では、音楽/音響といった理論的な隔たりが問題になる。近年のサウンドスタディーズをはじめ、とりわけ2000年以降は領域横断的なアプローチが試みられている。しかし既存の報告では、芸術家や研究者のバックグラウンド等に影響された「音楽/音響」実践・理論の対立する諸相が示唆されてきた。この問題は、芸術/科学、文化/自然などの二分法の対立と相似しており、その課題を乗り越えることの困難さが未だ残されていることがうかがえる。 この課題に対して本研究では、次年度に実施するフィールド調査において、オンライン作品とその配信、現代音楽祭など、音響芸術の実践で主流となっている、領域横断的で共創的な制作プロセスに注目する。そのプロセスにおいて、いかに芸術/科学、文化/自然といった側面がせめぎ合うのか、あるいはその二分法が無効になるのかを明らかにすることが、先の課題への対応としても有効であると考えられる。 さらに近年のコロナ・パンデミックにより、キューバ音楽をめぐる自然と社会の環境変化は、大きく重なりつつある。このことを念頭に、音響芸術の実践をめぐる日常からの差異や異質性・不均一性の生成や変容に注目し、音響芸術の系譜に自然環境・社会文化・人間の営みの変化がいかにあらわされてきたのかを考察することへと繋げてゆく。
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