初期近代イタリア美術におけるアルカディア表象の詩想と位相
Project/Area Number |
23K00161
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
高橋 健一 成城大学, 文芸学部, 教授 (70372670)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 牧歌 / アルカディア / プッサン / マリーノ / バロック / ルネサンス / イタリア |
Outline of Research at the Start |
詩作に秀でた牧人たちが暮らす文学上のアルカディアは、芸術創造の場として美術に特別な役割を担った。アルカディアの印象の形成に決定的に寄与したウェルギリウスの『牧歌』は、無数の注解と多彩な変奏を呼んだ。本研究では、文学上のアルカディアのイメージを再構成し、牧歌主題の絵画を分析する。伝統的なイタリア美術の体系で支配的地位にあった歴史画は、叙事詩や悲劇を模範とした。一方、弱く未熟なジャンルとされた牧歌は、規則からの自由さで評価を高めている。美術家の詩想が称讃されたルネサンス以後、詩人の場を表わした絵画は自己言及的な意味を帯びた。牧歌の理論的位相を考え、アルカディアの美術史的意義について検討したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
当該年度には、文学に描かれたアルカディアを再構成し、それとの比較を通して代表的な絵画を分析した。アルカディア表象の根源にはウェルギリウスの『牧歌』がある。一方、『牧歌』は無数の注解と多彩な変奏を呼んだ。そうした『牧歌』受容の系譜をたどり、対象作品の図像の精緻な理解を試みた。 とりわけニコラ・プッサンの「牧歌」の問題には集中して取り組み、画家の代表作《詩人の霊感》(ルーヴル美術館所蔵)について学会発表をおこない、雑誌論文一本を実現した。画家の「古典主義」を典型的に示すものとみなされたこの作品は従来「叙事詩人の霊感」とも記述されてきたが、申請者はその特異な図像の最大の典拠をウェルギリウスの『牧歌』第6歌に見いだした。論文ではまた、画家の盟友であった詩人マリーノの長編『アドーネ』を「牧歌」とみなす同時代の文学批評に注目し、プッサン作品成立の動機と関連付けた。 初期近代の美術の体系で支配的な地位にあった歴史画は、叙事詩や悲劇を模範とした。一方、それらと比して弱く未熟なジャンルとされた牧歌は、規則からの自由さで次第に評価を高めている。バロック期のローマで活動した画家プッサンはアルカディア表象の歴史に大きな役割を果たした。その意義について、《詩人の霊感》から得られた知見をもとに検討した。 またこのプッサン作品以外にも、ペトラルカ旧蔵のウェルギリウス写本にシモーネ・マルティーニが手がけた挿絵や、ティツィアーノの牧歌主題画について、多くの知見が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作品の調査・分析、文献資料の収集・読解がおおむね順調に進んでいる。 2023年9月にオーストリア、ドイツ、イギリス、スペイン、イタリアの各都市で実施した美術作品、文献資料調査では、想定にたいして十分な成果を得ることができた。 ロンドンのナショナル・ギャラリーでは普段は展示されないジョルジョーネ派の重要な作例を十分な条件のもとで実見できた。またハノーファー州立博物館、マドリードのプラド美術館では担当学芸員の協力のもとで収蔵庫にあるプッサン作品の調査をおこなっている。フィレンツェのマックス・プランク美術史研究所、ローマのヘルツィアーナ図書館、カザナテンセ図書館では、関連する文献をまとめて参照することができた。これらの成果はいずれも、次年度以降に発表を予定する研究内容にとってきわめて重要な基礎をなすものである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度においては、美術におけるアルカディア表象の歴史の再構成にとって重要となるシニョレッリ、ティツィアーノ、アンニーバレ・カラッチ、プッサンなどの作例に関する個別の研究を継続的におこなっていく。当年度の後半には比較的長期にわたるイタリア滞在を予定しており、その機会に対象作品を集中して調査するほか、マックス・プランク美術史研究所などの諸機関で関連文献を参照する。 そのうえで、初期近代の美術におけるアルカディア表象の意義について考察を深める。 そのために、文学における「牧歌」の位相を確認して、美術との影響関係、相互作用とその変遷について考える。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)