Project/Area Number |
23K00169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 盧舎那仏 / 梵網経 / 栴檀瑞像 / 清凉寺釈迦如来像 / 顕密融合 / 法身 / 舎利 / 納入品 / 仏身論 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、①『梵網経』の仏身論において意味づけられた栴檀釈迦瑞像、②化身釈迦の受戒における役割、③大仏の密教化を契機とする顕密を具えた法身の成立、④法身を象徴する像内納入品、という問題群に着目し、研究を進めるものである。これらの問題群は、東大寺大仏の造立によって成立した仏身論から導かれるものである。本研究では、これらの問題が、古代から中世の造形においてどのように発現し、どのように機能しているのかを探究する。それを通じ、本研究は、仏身論を基盤にした新たな仏教美術史の構築を目指している。
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Outline of Annual Research Achievements |
東大寺大仏の造立は、現世の釈迦は盧舎那仏の化身であるという『梵網経』に基づく世界観を生んだ。その後空海により東大寺真言院が建立されると、大仏は密教化し大日如来と同体視されるようになる。東大寺僧奝然が造立した清凉寺釈迦如来像は、大仏を顕密を融合した法身と見る仏身論に基づき盧舎那仏の化身として造られた。本研究は、以上の見通しを基礎に、東大寺大仏から始まる仏身論が、平安時代以降の日本に大きな影響を与えていることを、①『梵網経』の仏身論と栴檀釈迦瑞像、②化身釈迦の受戒における役割、③顕密を具えた法身の成立、④法身を象徴する像内納入品という四項目を軸に明らかにするものである。今年度は、①に関連して、a「盧舎那仏と栴檀釈迦瑞像―北宋・遼と日本の仏身論をめぐって」(『東アジアの王宮・王都と仏教』勉誠出版 2023年10月)、③に関連して、b「見えないものを見せる―宗教美術における風のイメージ」(『風のイメージ世界』 三元社2023年10月)、④に関連して、c「法身としての舎利と容れ物―仁寿舎利塔から大仏へ」(『器と信仰』勉誠出版 2024年3月)を刊行した。さらに、貞慶の著作を検討し、その思想に見られる法身ー化身、本地ー垂迹という権実の構造を分析した。この構造は、貞慶周辺で製作された美術に濃厚に反映しているが、特に、釈迦如来像と春日本地仏にその反映が顕著に認められる。釈迦如来・比丘来迎像(根津美術館)、春日宮曼荼羅を中心にその分析をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のaでは、清凉寺釈迦如来像の依拠する仏身論が、北宋・遼の事例にみられる仏身論とどのような関係にあるのかを明らかにした。同時に、その核心に位置する開封の盧舎那仏像の像容を他作例と比較しつつ探究した。bでは、宗教美術に見られる風の表現をとりあげ、そこに超越者から人間に示される徴候という意味と役割があることをあきらかにした。風は超越者と人間の媒介であり、それ自体に意味はないというこの観点は、風の意味を自明とする見方へのアンチテーゼであり、「法身」という見えない仏をめぐる議論の一環でもある。一方で、風が障害として意識される場合では「災難としての風」というありようが成立する。この時風はそれ自体として意味を持つが、この意味での風を象徴するのが「風神」という尊格である。この点については同稿では問題の所在を示すに留めた。cでは、本来は生身という仏身論上の意味を持つ舎利が「法身」と見なされる事例を、隋の仁寿舎利塔、空海の思想における舎利、清凉寺釈迦如来像の納入品、再興東大寺に納入された舎利の各点から論じた。以上のそれぞれは、仏身論を基盤にした新たな仏教美術史の構築という本研究の目的に添う成果である。したがって、本研究は当初の計画以上に進展していると見なされる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本の仏教的な造形には、法身-生身(化身)という二身論が普遍的に組み込まれている。この考え方は『華厳経』・『梵網経』の受容により、奈良時代の大仏造立において成立した。かたちのない「法身」は本来表象することが困難であるが、平安時代以降、華厳思想と密教が重ねられることによって、大日如来という意味を伴って法身は形象化されていく。このありようは、東大寺大仏において顕在化し、清凉寺釈迦如来像へも及んでいる。また、本来は生身という仏身論上の意味を持つ舎利が空海の思想下で「法身」と見なされたとみられ、以後、平安時代から鎌倉時代にかけてその意味を定着させていく。仏像の納入品は、院政期以降に月輪、鎌倉初期以降に五輪塔が隆盛する。納入品もまた仏身論上の意味を担っている。春日宮曼荼羅に描かれる天象は月とも太陽とも認識されているが、これもまた、仏身論上の意味を担っている。以上の見通しを軸に今後も、美術における「法身」の形象化の問題を探究し、最終的には、東アジア世界の仏教造形を「仏身論」を基軸に再構成する計画である。
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