Project/Area Number |
23K00406
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
矢野 奈々 北里大学, 一般教育部, 講師 (60961563)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 19世紀小説 / 医者 / ヴィクトリア朝 / ジョージ・エリオット / アントニー・トロロープ / ミドルマーチ / ソーン医師 / 19世紀イギリス小説 / アーサー・コナン・ドイル |
Outline of Research at the Start |
イギリスの19世紀は医学的飛躍が目覚ましい時代で、それに伴い医者と患者の関係も変化した。この両者が直面した当時の社会の様子と医者を主人公とするこの時期の文学作品を取り上げた研究は僅少である。そこで、医療小説研究で前例のあるジョージ・エリオットとエリザベス・ギャスケルの作品をさらに分析していくことはもちろんであるが、国内ではほぼ研究されていないアントニー・トロロープの『ソーン医師』(1858)、アーサー・コナン・ドイルの『ラウンド・ザ・レッドランプ』(1894) を新たに取り上げ、医者としての地位の確立と医学の受容までに、負のイメージを持たれながらも奮闘した医者たちに迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
19世紀半ばの小説において以前は脇役に据えられることの多かった医者が主役に変わって描かれるようになり、医者が主役となる代表的な小説にアントニー・トロロープの『ソーン医師』、ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』が挙げられる。23年度はこの2つの作品に関する資料調査と収集をロンドンのBritish Libraryで行い、その成果を研究発表し、論文公表も行った。 『ミドルマーチ』は『ソーン医師』から13年経って出版された作品で、この2つの作品は時代設定が1830年前後と同時期であるので、本来であれば作者が違っていても、作品内の医者の診断方法、患者応対などの描写に類似を見ることができると予測できるが、実際は全く違っている。その原因として1858年の「医療法」の成立やこの時期の科学と医学の著しい進歩といった社会の変化が小説世界にも反映されていると考えられる。 当時の医者と患者の関係性や医療にまつわる資料を参考にしながら、この2作品の検証を行い、トロロープとエリオットが医者を完全なる主役に据えられなかった葛藤があったことが分かった。ソーン医師とリドゲイトを比較すると、彼らの「人間性」において大きな違いを見ることができ、その一方で、両者にはそれぞれのコミュニティーにおいてインフルエンサーとしての役割を果たしている共通点があるのである。そして、ソーン医師とリドゲイトは小説における医者の脇役から主役への移行の流れに大きな影響を及ぼしたのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度となる2023年度は夏季にロンドンのBritish Libraryにて資料調査と収集を集中的に行い、その成果を日本英文学会関東支部第23回(2023年度秋季大会)にて研究発表を行った。さらに研究発表したものを論文としてまとめ、2024年3月に北里大学一般教育紀要に掲載することができた。学会での研究発表からあまり時間が経過しないうちに論文公表することができたので、おおむね順調に進展していると判断して良いと捉えた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年12月21日に成蹊大学にて日本ジョージ・エリオット協会全国大会が開催される予定で、この大会のシンポジウムで司会兼パネリストとして発表することが決まっている。このシンポジウムでは他の2名のパネリストと共に医学、科学的テーマが含まれたエリオットの作品と、19世紀イギリス小説、さらにはルイスの著書を取り上げ、当時の文学と医学・科学について考察していくことになる。 昨年同様に、ロンドンのBritish Libraryにて資料調査と収集を行うことでシンポジウムに向けた準備と2025年度の研究対象となるアーサー・コナンドイルに纏わる調査を進めていきたいと考えている。但し2023年10月に起きたBritish Libraryに対するサイバー攻撃により、現時点で図書館サービスが完全に復旧していないので、状況をよく把握してから渡英を検討していきたい。
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