ヴィクトリア朝小説の正典形成におけるジェンダーと大衆小説の関与性の考察
Project/Area Number |
23K00408
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
永富 友海 上智大学, 文学部, 教授 (60305399)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ジョージ・オーガスタス・サーラ / センセーション・ノヴェル / ベルグレイヴィア / 正典小説 / ボヘミアン小説 / 大衆小説 |
Outline of Research at the Start |
本研究ではヴィクトリア朝小説史の中核を成すCharles Dickensの正典性を支える文学的・文化的イデオロギー構造の一端を炙するとを目的とする。具体的には "Dickens's Young Men"という位置づけにあった作家George Augustus Salaの活動に焦点を当てる。Dickensの強い影響のもと、彼の模倣をし、Dickensには書けなかった題材に切り込んでいくSalaは、今日のイギリス小説史には浮上してこない「ボヘミアン・ノヴェル」の担い手である。この層にまでメスを入れることで、Dickensを核とするヴィクトリア朝小説が孕む排除と包摂のメカニズムを明らかにしてみたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はまず、George Augustus Salaの著作物を中心とする資料収集を主眼とした研究を遂行した。当時出版された書籍の複写版はいくつか購入可能であるが、複写の印刷状態や文字の大きさなど、実際に使用不可能な版もあるため、それらを確認のうえ、使用可と思われる版についてはできる限り、本務校である上智大学図書館に購入の依頼をおこなった。それ以外のものや、現在では入手困難な作品については、ロンドンのBritish Libraryおよびロンドン大学付属のSenate Libraryで複写をおこなった。 著作以外に、ジャーナリストとしてのSalaが具体的にどの時期にどのような雑誌に寄稿していたかをまず洗い出し、テーマ的に本研究で押さえなければならない資料のあたりをつける作業をおこなった。特にDickensの力添えでジャーナリズムへの参入を果たしたという側面が見逃せないSalaの場合、Dickens研究を入り口としてSalaの活動への接近を図るという工程が必要であり、Dickensの伝記や研究書、書簡集、彼が主催する雑誌を中心として、Salaの執筆活動に関する情報を収集した。またSalaとの比較分析をおこなう基盤として、まずは1850年代のDickensの代表作『荒涼館』の読解分析をおこなった。 一方で、Dickensよりもさらに煽情性の強い作風を手掛けていたsensation Novelistsたちとの関係もSalaの研究においては極めて重要な意味を持ち、わけてもMary Elizabeth Braddonとの関わりには興味深い点が多々あると思われる。よってBraddonの伝記および彼女が編集を行っていた雑誌類を中心にSalaの情報を探り、発表媒体によってSalaがどのようなテーマの選択をおこなっているかを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
George Augustus Salaの資料収集については初年度は概ね良好である。ただし、2023年10月31日からBritish Libraryでの資料収集のために5泊の予定で渡英した海外出張の際に、British Libraryがサイバー攻撃に合い、すべてのシステムがダウンするという事故に遭遇し、当初の予定変更を余儀なくされた。初日の訪問では日本からの出張であるという事情を説明し、かろうじて閲覧希望の書籍を一冊調査することが可能になったが、2日目からは調査場所をロンドン大学付属のSenate Libraryに切り替えた。こちらでの収集は次年度以降におこなう予定であったが、予定を前倒しし、十分な調査を行うことができたのは幸いであった。特にBraddonの著作が新たに何冊か電子化されており、Senate Libraryでの使用許可を得て、それらのデータを収集することができたことは大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
①まず2023年度に引き続き、可能な限りの資料収集をおこなう。British Libraryの都合で打ち切らざるをえなかった昨年度の調査を続行し、さらに昨年度Senate Libraryに調査場所を変更した際に新たに発見した電子書籍のデータの収集も引き続きおこなう。 ②収集したSalaの著作及び投稿記事をsensationalismという観点から分析し、Dickensが自らの雑誌への投稿記事として許容するラインがどの辺に位置するのかを明確化する。同様の視点から、Dickensの60年代の小説に目を向け、センセーション・ノヴェル最盛期のその時期において、Dickensの正典小説、大衆小説としてのセンセーション・ノヴェル、さらにその下の層に位置するボヘミアン小説を縦に切ることによって、従来の文学史では同定できていなかったsensationalismの広がりを明らかにする。 ③雑誌Belgraviaの編集にBraddonが関わっていた時期に焦点を当て、Salaが投稿した大衆小説擁護の記事が、編集者兼小説家であるBraddonが戦略的に打ち出そうとしたセンセーション・ノヴェル格上げのためのイデオロギーとどのように交差しあっているかを分析する。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)