Project/Area Number |
23K00422
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
高岡 尚子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (30403314)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | ジョルジュ・サンドと「ケア」の倫理 / フランス文学(1840年代) / 政治思想 / 政治活動 / ジェンダー / 19世紀フランス文学 / ジョルジュ・サンド / ケアの倫理 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、フランス19世紀の女性作家ジョルジュ・サンドの「田園小説四部作」を考察の対象として扱う。これらの作品の執筆時期は、サンドが最も熱心に政治的な発言を行い、とくに、1848年の二月革命期には臨時政府が発行した『共和国公報』に関わっていたことが知られている。と同時に、この時期には、サンドが実生活において家族のみならず、周囲の人々をケアする責任を強く意識していたこともうかがい知れる。田園小説群の内容と執筆時の作家の経験とを照らし合わせつつ、同時期に発表された政治的言説の内容に注目し、そこに込められた作家の政治思想と理想とされた社会像を、「ケアの倫理」の視点を考慮に入れながら明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランス19世紀の女性作家ジョルジュ・サンドが、1846年から1853年の間に発表した、地方の農村や森林地帯を舞台とする「田園小説四部作」を考察の対象として扱い、この時期にサンドが熱心に取り組んでいた政治活動のさまざまな側面と、当時、実生活において家族のみならず、周囲の人々をケアする責任を強く意識していたことを加味しながら、それが作品等の執筆にどのような影響を与えていたかを考察するものである。また、同時期に発表された政治的言説の内容に注目し、そこに込められた作家の政治思想と理想とされた社会像を、「ケアの倫理」の視点を考慮に入れながら明らかにすることも目指している。初年度にあたる令和5年度には、おもに田園小説最初の作品にあたる『魔の沼』執筆(1845)にいたるまでの約5年間の作家の状況について、書簡などの資料をあたりながら特に「ケア」に関する概念と語彙に注目しつつ整理した。その過程において、政治的発言の発端とみられる1843年執筆の記事『ファンシェット』の重要性と、作家自身がその立ち上げに関わっていた雑誌・新聞の成立過程の政治的意義、また、その状況自体が現在議論の対象になっている「ケアの倫理」と深く呼応するものであることが確認された。加えて、田園小説四部作の最初の作品である『魔の沼』執筆の背景を考えるにあたっては、「ケアの倫理」と共通点の多い「エコフェミニズム」の思想を再検討することが重要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1~2年目に田園小説4部作の執筆背景(主に1845年から1853年)を網羅的に整理することを目標としていたが、実際に取り組んでみた結果、政治的発言・活動を行い始めた時期(1843年ごろ)の状況と、そうした活動を行うようになったきっかけをより深く掘り下げる必要性を感じた。そこで、初めての政治的発言とされる記事『ファンシェット』の内容やそれが発表された雑誌Revue Independanteおよび作家自身が立ち上げることになった地方紙L'Eclaireur de l'Indreの刊行の背景について詳細に検討した。また当時の作家の状況が、田園小説の最初の作品『魔の沼』にどのように反映したかについて、その直前に書かれた作品との関係から検討した。初年度は、作家に関する図書のほか、ジェンダーや「ケア」に関する図書を補助金によって購入したが、研究を進めるなかで重要性が確認された「エコフェミニズム」に関する資料、ならびに来年度以降の研究において必要となる文献(主に地方における福祉施設の状況に関するもの)も加えて収集した。なお、今年度に得られた研究実績については、次年度に出版されるフランスのジョルジュ・サンド研究誌に論文掲載が決定している。今年度の目標はほぼ達成し、次年度の準備にも取り掛かれたことから、(2)を選択している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度には田園小説の最初の作品『魔の沼』にいたるまでの、作家の政治活動の状況、および実生活においてどのような問題を経験していたかについて整理し、「ケア」の観点から考察した。2年目には、国際ジョルジュ・サンド学会において研究成果を発表する予定をしていたが、学会が扱うテーマが本研究とは合わないことがわかったため口頭発表は見送ることとした。一方、令和6年発刊予定のフランスのジョルジュ・サンド研究誌に初年度の研究内容を発表することが決定した。また、国際学会への参加を見送ることとなったため、そのために予定していた海外渡航費を2年目以降に遂行する研究内容(とくに田園小説2作目の『棄て子フランソワ』に見出すことにできる遺棄児と施療院の体制のテーマ)を拡充するため、サンドが居住していた地域における状況の実地調査を行うこととしたい。合わせて、計画では3年目に予定しているノアンの館と地所や近隣のラ・シャートル市に残された資料(博物館、図書館所蔵)調査も前倒しの形で進めていく。これによって、「ケアの倫理」との関連性をさらに深く検討することができる。
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