The Correlation between Restrictions on Expression and the Development of Film Genres during the Nazi Occupation, as Seen in the Adaptation of Detective Stories to Film
Project/Area Number |
23K00448
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
永田 道弘 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (50513743)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 映画 / 占領下フランス / 検閲 / プロパガンダ / フランス映画 / ナチ占領下 / 表現規制 / 翻案 / 探偵小説 |
Outline of Research at the Start |
フランス1930年代の探偵小説の映画化を切り口に、原作からの改変具合にみるヴィシー政府の検閲、市民社会的なモラルを求める世論、ジャンルに対する観客の安易な期待の影響を検証し、良作の多い占領下の探偵映画の新しさや質の高さの内的要因が、これら外的圧力への対応にあったのかを解明する。映画作家たちはこの対応の一環として、探偵映画というフォーマットを採用し、戦略的に1930年代の探偵小説を原作に選んだという想定のもと、これらの探偵小説のいかなる側面が映画化の際に重要な意味を持ったのかを合わせて考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナチス占領下のフランス映画の新しさや質の高さの内的要因が、表現規制という外的圧力への対応にあったのかを解明するため、考察を進めている。 ただ、研究の進行中に、新たな課題が発見され、それに対する追加の検討が必要となった。具体的には、戦時下における表現規制の影響は各国で異なり、外的圧力が必ずしも映画の質を高める必要十分条件ではないのではないかという問題である。実際、ドイツや日本のようにプロパガンダへの圧力が強い国では、良質な映画が作られたとは決していえない。一方、日本やドイツと同様に権威主義的な政府の統治下にあったイタリアでは、フランスに匹敵する質の高い映画作品が生み出されている。このように、戦時下において新しい映画表現を生み出す契機となりうる表現規制の実態をより詳細に分析する必要があると考えた。 この問題意識を基に、次の論文を発表した。「二つの空 ─大戦期の日仏映画比較─」(『言語と文化:愛知大学語学教育研究室紀要 48』愛知大学語学教育研究室, 2023/7, p.29-41.)この論文では、ジャン・グレミヨン監督の『この空は君のもの』(1944年)を、国策映画への強力な圧力が働いた戦時中の日本で製作された『決戦の大空へ』(1943年)と比較分析した。占領下フランスにおける傑作と評価される前者が生まれた要因の一つとして、ヴィシー政権の思想統制が必ずしも強力ではなく、その道徳主義的イデオロギーから逸脱する表現の余地があったことを確認した。 今後は、ヴィシー政権下の思想統制の限界と、それによって生じた芸術的表現の余地(自由)についても考慮しながら研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマは「探偵小説の映画化にみる、表現規制と映画ジャンルの発展の相関関係の解明」であり、具体的にはシムノンやステーマンらの探偵小説の映画化における、表現規制に対抗した映画作家らの戦略を、原作の改変内容から明らかにしていく。 計画している研究は以下の3項目に大別できる。①1930年代のフランス探偵小説の特徴およびその映画化の分析 ②ヴィシー政権による表現規制の実態の解明 ③外的圧力に抗する映画作家の戦略の考察。 2023年度の活動としては、主に映画表現に対する外的圧力の影響を明らかにするため、ヴィシー政府の官報、新聞・雑誌の映画時評等の資料の収集および分析を行った。特にヴィシー政府公認の雑誌Le Filmについては、1940年から1944年に発刊されたすべての号を複写し、目下分析にとりかかっている。同時に、1930年代のフランスに登場したシムノンやステーマンらの新しい探偵小説の映画化にみられる特徴を把握するため、クルーゾー監督による『犯人は21番に住む』に焦点を合わせ、同映画作品のカット割り台本等の資料が保存されているシネマテーク・フランセーズの〈Fonds Henri-Georges et Ines CLOUZOT〉の調査に着手した。 占領下フランスにおける表現規制のより正確な実態の把握の必要性といった新たな課題についても、一定の分析結果が得られたが、今後も引き続き対応を進め、研究の更なる発展を目指したい。 以上、2023年度の研究は、当初の目標に対して順調に進行しており、今後のステップに向けた準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
映画表現に対する外的圧力の影響を明らかにする一環として分析中のヴィシー政府公認の雑誌『Le Film』について、その考察結果を雑誌論文として発表する予定である。また、ステーマン原作、クルーゾー監督による『犯人は21番に住む』のカット割り台本など資料の分析成果を、2024年度の日本フランス語フランス文学会中部支部大会にて発表する予定である。 戦時下において新しい映画表現を生み出す契機となりうる表現規制の実態を詳細に分析するという課題に関しては、権威主義的な政府の統治下にありながらも、フランスに匹敵する質の高い映画作品が生み出されたイタリアのケースを比較対象とすることが有効である。よく知られているように、戦時下のファシスト政権下のイタリアでは、モダニズム芸術が政府の宣伝目的のもとに抑圧されるどころか、むしろ大きく進展した。映画の分野も例外ではない。このような二面性が、ロッセリーニなどの監督たちに新しい表現方法を模索させ、結果的に質の高い作品を生み出す土壌となった。 具体的には、表現規制と創造性の関係性を考察する上で興味深いケーススタディであるロッセリーニの映画に焦点を当てる。彼はファシスト政権下でいくつかのプロパガンダ映画を制作すると同時に、戦後のネオリアリズムを予告するような作品を撮った。これにより、戦時下や権威主義的な統治下での映画表現の進展についての考察を進める。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)