A study on the semantics-prosody interface
Project/Area Number |
23K00478
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
伊藤 さとみ お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60347127)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 形式意味論 / プロソディ / 中国語 / 前提 / 焦点 / 意味論 / 疑問文 / 反語 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、中国語の反語疑問文の分析を通し、意味論とプロソディのインターフェースを明らかにする。意味論には、文脈を可能世界の集合の集合の対として捉える文脈意味論を用い、反語疑問文の諸特徴、例えば、当該疑問文の命題全体が文脈に既に存在しなければならないという反語の使用条件や、反語疑問文が発話された後、聞き手が通常の答えを行わないなど、文脈に与えるインパクトを意味論のモデルで説明する。さらに、母語話者の音声の分析を通し、疑問文の反語解釈をもたらすプロソディは何かを明らかにしたうえで、それらの特徴的プロソディを意味論に組み入れた理論を構築し、意味論ープロソディのインターフェース研究を推進する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、意味論とプロソディのインターフェースを、中国語の反語疑問文の分析を通して明らかにすることを目的としている。申請書に述べたように、疑問文が反語として解釈される条件には、(1)断言内容が文脈に既に存在している、(2)平叙文に近いプロソディで発話される、の二つがある。2023年度は、中国語の疑問文について(1)の特性を考察した。 2023年度は、文末助詞“ma”の形成するyes/no疑問文(ma疑問文)、副詞“ke”の形成するyes/no疑問文(ke疑問文)、接続詞“haishi”の形成する選択疑問文を考察した。 Ma疑問文は、命題内容が真であることを話者が期待していることが多い。そのため、返答には、相手の考えを肯定する“dui”が使われることが多い。一方、ke疑問文は、命題内容の真偽について中立的である。これについて、副詞“可”の機能全般と合わせて、「中国語の語気副詞“可”の意味論」の題でお茶の水女子大学中国文学会第42回大会で考察を述べた。さらに、そのプロソディとの関連を、マカオで開催されたIACL-29にて、“Prosodic features of the Chinese adverb ke”の題で論じた。最後に、選択疑問文では、選択肢それぞれの命題が提示された上で、どちらが真であるかを選ばせる疑問文であることから、処理のいずれかの過程において、各命題を前提として会話の共通基盤に存在するように調整する必要があるという考察を、“How are partitions marked - the case of 'ne' in Mandarin Chinese.”の題で、2023年8月に出版されたDiscourse Particles in Asian Languagesの4章に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度には、まず研究の基礎として、中国語の反語文についての記述をまとめたが、先行研究では、使われる語彙による形式的な分類がほとんどであり、反語文の例自体も著者の直感に基づく判定であったことから、そのまま用いても反語文を成立させる条件の研究には結びつかないと判断した。そこで、計画を前倒しして、疑問文の意味論を考察し、反語文の分析に繋げた。 分析には、Hamblin意味論にStalnakerの会話の共通基盤の概念を組み合わせた動的意味論を用いた。Hamblin意味論は疑問文を命題を真にする可能世界の集合と捉え、Stalnakerは会話の共通基盤を話し手の信念に矛盾しない可能世界の集合と定義しているため、互いに親和性がある。 2023年度に考察した疑問文は、いずれも内容と疑問点の二つに分けることができる。Yes/no疑問文であれば、内容は命題、疑問点は真理値であり、選択疑問文であれば、内容は各選択肢命題、疑問点はどちらを選ぶかである。このように疑問文の意味を切り分けることで、疑問文の内容のみが会話の共通基盤に一時的に置かれ、疑問点に焦点があてられていると説明した。さらに、内容が一時的であれ共通基盤に置かれていることにより、疑問文が反語文として解釈される条件の(1)断言内容が文脈に既に存在している、を満たすことを指摘した。なお、wh疑問文については、wh要素以外の部分が文の前提になるということはよく指摘されており、wh疑問文も条件(1)を満たしているということができる。このように、疑問文の意味を詳しく定義することで、反語文と解釈される素地が疑問文に備わっていることを明らかにした点で、進展があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には、2023年度に調べた中国語の反語文の種類とよく使われる語彙を手掛かりに、中国語の反語文についてのデータ収集用例文を作成し、音声の収集と分析を行う。反語文の例の作成は、北京大学語料庫(CCL)などのコーパスや小説から抽出したうえで、母語話者のチェックを経て、豊富な文脈を伴う自然な表現の例文を作成する。また、データ収集用例文の抽出や作成の際には、2023年度の疑問文の意味についての考察を踏まえた上で、同一の反語文に対し、文脈のペアを作成する。つまり、同一の語配列の反語文について、それが発話された時点で、その命題内容が会話の共通基盤にある文脈と会話の共通基盤にない文脈のペアを作り、反語文の容認度と音声に影響を与えるかどうかを調査する。調査対象者は研究代表者の勤務する大学で募集を呼び掛け、12名程度を予定している。なお、調査の前には、お茶の水女子大学の人文社会科学研究の倫理審査委員会の承認を得る。データの収集は、研究代表の研究室(防音加工済み)で行う予定である。容認度と音声のデータを収集したのち、音声データの分節化を行い、反語文全体のピッチ高、ピッチ幅、持続時間、インテンシティ、きしみ音等の有無を測定する。さらに、反語文を構成する語一つ一つについても同様のデータを取り、これらの特性の縮約と拡大が各語についてどのように表現されているかを明らかにする。こうして集めた各データは、文脈や容認度を変数とする統計処理を行う。最後に、以上の考察をまとめ、学会で発表し、論文にまとめて投稿する。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)