Project/Area Number |
23K00526
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Komatsu University |
Principal Investigator |
岡村 徹 公立小松大学, 国際文化交流学部, 教授 (10288954)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 言語接触 / ピジン / クレオール / 言語維持 / 社会言語学 / ナウル共和国 / パプアニューギニア |
Outline of Research at the Start |
令和5年度は、調査地であるナウル共和国または近隣のノーフォーク諸島に出かけ、言語接触現象を観察し、言語維持のためにどのような工夫が、当該社会でなされているのか、調査する。令和6年度は、豪州ブリズベン在住のナウル人に焦点を当て、彼らの日常生活におけるピジン英語の使用状況について調査する。令和7年度については、再度ナウル共和国か豪州ブリズベンに出かけ、過去2年間で集めたデータを、補足・整理し、最終的に研究論文という形でまとめたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
ナウル共和国で話されているピジン英語を通じて考察した、言語保持のための条件として、含意階層理論を提唱した。この言語保持のための理論を検証するため、オセアニアの他の地域で話されているピジン英語においても、通用する枠組みかどうか検討した。考察の対象としたのは、ニューギニアのピジン英語の条件節を導くsaposにかかる文法現象を対象とした。その結果、saposの省略は、条件節が先行する表現においてのみ、それが起きるとの説明が従来の文法書にあるが、実際は、saposが後行する型においても省略が起きることが、現地でのフィールドワークで明らかになった。これは周辺で話されているピジン英語の事例から、当該言語の文法的成熟を意味し、接触言語としての安定の度合が高いことを意味する。つまり、筆者が提唱した含意階層理論(マスコミ>社会的要因>政治的・経済的要因>居住環境>アイデンティティの喪失)で言えば、例えば、居住環境が崩れれば、その左側にあるファクターが必ず存在するというものであり、当該言語においては、村落社会における自治がきわめて良好な形で、保持されており、当該地域で話されているピジン英語も、その社会的・言語的威信が保たれており、その結果、ピジン英語も安定的に話されていることが検証できた。従属節を導くsaposが従属節先行型においてばかりでなく、従属節後行型においても起きやすいのは、英語の場合と同じで、その証左となる。なお、筆者はナウル共和国で話されているピジン英語を通じて考察した当該の理論を、他のピジン英語でも当てはまるのか、さらに検討を重ねていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆者がナウル共和国で話されているピジン英語を通じて考察した、含意階層理論を、オセアニアの他の地域で話されているピジン英語でも、検証ができたことは大変有意義であったため、「おおむね順調に進展している」とした。今回特に有益だったのは、従来の文法書では、従属節が主節に先行する例文しか取り上げていないことが多かったため、接続詞saposの本来の性質を筆者も含めて正しく説明しきれていなかった。それを現地パプアニューギニアの村落社会で村民を通じて検証できた意義はやはり大きい。こうした作業を通じて、当該言語の安定度を再確認できた。なお、当該の理論を、強固なものにするためには、他の接触言語を通じて、さらなる検証が必要になると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、上記の含意階層理論を検証するため、豪州のブリズベンおよび豪州シドニーの北東1700kmに位置する、ノーフォーク諸島に足を運ぶ予定である。特に後者においては、言語接触・言語保持の実態を探るために、ニュージーランド系ノーフォーク島民の話す、伝統的なニュージーランド英語の語彙がどの程度保持されているのか、また、もし保持されていないのであれば、どういったファクターが重なり、そうした状況を抱えているのか、社会言語学的な視座から考察する予定である。また、前者においては、来年度にナウル共和国で調査を行う予定なので、その前段階としての資料収集を当該の地で行いたい。特に、ブリズベン市内にある、ナウル共和国総領事館や同市内に在住する、ナウル人に言語接触にかかるインタビュー調査を行う予定である。
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