中世漢字字書・語彙辞書統合データベースの構築による和訓の段階的構造の解明
Project/Area Number |
23K00552
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
白井 純 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (20312324)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | キリシタン版 / 落葉集 / 定訓 / 常用和訓 / 漢和辞書 / 国語辞書 / 同音異表記 / 古辞書 / 漢字 / 和訓 / データベース |
Outline of Research at the Start |
中世日本語の和訓研究では、複数の漢字字書を比較し、現代の常用漢字表も参照しながら、個々の漢字に定訓(個々の漢字に優先的に結びつく常用性の高い和訓)が安定して存在したとの指摘がなされてきた。 しかし、中世日本語の漢字表記には定訓以外の和訓も多く使用されており、定訓だけでは漢字表記の実態を説明することができない。同訓異字の書き分けのような漢字表記の体系性は、定訓を取り巻く実用的な和訓の存在によって補完されており、その外側に、漢字字書にみられるだけの常用性の低い多くの和訓が存在する段階的構造モデルを解明するのが本研究の概要である。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究計画に従い、エクセル形式で入力したキリシタン版『落葉集』および慶長15年版のデータを研究者の個人ホームページおよびresearchmapで公開した。中世古辞書研究において不可欠な資料の公開データとして、広く研究に活用されることが期待できる。『易林本節用集』のデータ整理もおおむね完了し、公開に向けた最終確認を行った。 また、今年度は研究論文(共著含む)を4本発表した。1.「『羅葡日辞書』を読み直す-日本語資料としての再評価に向けて-」(2023年8月)では、キリシタン版『羅葡日辞書』のラテン語に対する日本語語釈に漢語と和語を併記した例が多いことに注目し、和訓を利用した同音異義漢語の同定があったことを指摘した。2.「キリシタン版」(日本漢字学会編『漢字文化事典』丸善出版、2023年11月)では和訓を用いた語の同定が、キリシタン版の辞書・宗教書のローマ字表記にとって不可欠であったことを指摘した。3.「キリシタン版『さるばとるむんぢ』ユトレヒト本の発見―思想史およびキリシタン語学からの検討―」(『大阪大学大学院人文学研究科紀要』1号、2024年3月)では、新出キリシタン版の漢字活字の悉皆調査を行い、活字印刷から同書の位置づけを行った。4.「キリシタン版『落葉集』定訓の常用性について―同訓異表記を中心として―」『表現技術研究』19号、2024年3月)では「落葉集」の定訓が当時の日本語表記にとっておおむね常用訓であったことを、キリシタン版『太平記抜書』の漢字表記とその推定和訓に基づいて立証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から計画していたとおり、過去に入力した古辞書のデータをホームページおよびresearchmapで公開したことで、中世古辞書研究に不可欠な資料の活用が促進されることが期待できる。 研究論文を4本公開したことで、本科研の研究課題に関する知見を深めることができた。 特に、キリシタン版『落葉集』の「定訓」が当時の常用和訓であったことを、これまで未調査だったキリシタン版以外の文献を調査して明らかにしたことは、定訓(常用訓)研究にとって大きな意義があることだと考えている。なお、調査対象としたキリシタン『太平記抜書』の原典は『太平記』(梵舜本)であり、漢字表記は原典に忠実であるため、これを日本側の資料とみなしうると判断している。 以上により、当初の計画に沿って順調に成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画にしたがって入力データの積極的公開を行うとともに、漢字→和訓、和訓→漢字の双方向で利用できるデータ形式についての検討を進めたい。 中世古辞書には倭玉篇などの漢和辞書と、節用集などの国語辞書(語彙辞書)があり、そこには漢字と和訓が掲載されている。しかし、漢字→和訓の形式での情報と、和訓→漢字の形式での情報との間には相違があり、そこに、当時の日本語表記の実態が現れていると考えられる。 この点を明らかにすることで、各辞書の性格をより深く理解することができると期待されるが、それを端的に実現した辞書として、キリシタン版『落葉集』の「色葉字集」を取り上げたい。「色葉字集」は和訓→漢字の形式をもつ国語辞書(語彙辞書)として表面上は位置づけられるが、掲載漢字を部首分類しており、各漢字には複数の和訓を掲載するなど日本側の古辞書にみられない特徴がある。 部首分類は内部的に漢和辞書の性格を備えるということであり、この事実は「色葉字集」の編集方法にもつながる問題だが、漢字→和訓、和訓→漢字という双方向の情報を整理しようとした辞書として理解できるのではないか。 今後はその点に着目し、中世古辞書の実態をふまえつつ、キリシタン版『落葉集』の再評価を行いたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)