Project/Area Number |
23K00573
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大谷 直輝 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (50549996)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 構文文法 / 認知言語学 / 用法基盤モデル / コーパス言語学 / 深層学習 / 言語変化 / 変化・変種・変異 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、言語の変化・変種・変異という3つの観点から、形式と意味の対として定義される「構文」を分析することで、理想化・平準化された言語知識ではなく、言語使用の場から創発する非均質的な言語知識のありようを調査するための理論と方法論の精緻化を試みる。研究を通じて、(i) 実証的な構文研究に必要となる理論と方法論を示すと同時に、(ii) 具体的な表現と高度に抽象的な文法の中間段階にある様々な構文を発掘する。また、研究の成果を用いて、(iii) 辞書や文法書の執筆や、認知科学の学際的な研究に応用可能な分析手法を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究プロジェクトの一年目である2023年度は,理想的な母語話者が持つとされる均質的な知識ではなく,言語の変種・変異・変化のようなジャンルや方言によって異なる言語知識の分析を試みた。同時に,計算言語学・深層学習の研究者との学際的な研究を通じて,深層学習を言語分析に応用するための方法論に関する検討も行った。具体的には以下のような研究を行った。 第一に,これまでに行ってきたbetter off構文と呼ばれる不規則的な構文に関する一連の研究成果をまとめた論文を執筆し,日本言語学会のジャーナルである『言語研究』に採用された。本論文では,コーパス分析に基づいてボトムアップで生成された仮説に対して,言語学的な手法と深層学習を用いた手法を用いて検証しようとしたものである。第二に,英語の動詞は制の前置詞の文法化を扱った「動詞派生前置詞の文法化の定量化」を言語処理学会で共同で発表した。第三に,同様の観点から言語処理学会にて「意味の集中度に基づいた意味変化検出」とする共同発表を行った。これらの研究では,実証的な言語分析手法が乏しい言語学において,新しい方法論を模索するものである。第四に,大規模なコーパスを用いて,名詞句として機能する前置詞句の網羅的な調査を行った。特に,前置詞の補語句として用いられる前置詞が持つ傾向を,英語の方言などに分類しながら考察し,国際認知言語学会で発表を行った。 『言語研究』に投稿をした論文は,日本国内の言語系の主要な学会誌において初めて採用された深層学習を全面的に用いた論文という点で評価ができる。また,「動詞派生前置詞の文法化の定量化」は文法化という極めて言語的な現象を深層学習を用いて捉えるという試みが評価され,言語処理学会の優秀賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は現時点でおおむね順調に進展していると言える。一年目が終わった段階であるにもかかわらず,研究成果の一部は,『言語研究』の認知言語学に関する特集号において採用が決定した。特に,方法論の面で,従来の言語研究とは顔となり,言語的な分析から導かれた仮説の妥当性を深層学習を用いて検証するための手法を模索している点は評価ができる。同時に,単語ベクトルを用いた言語研究も開始しており,こちらも,言語処理学会の年次大会において優秀賞を獲得した。以上の点から,少なくとも方法論に関しては言語学でも自然言語処理でも一定の評価がなされている。 さらに,方法論の面では,変種・変異・変化を分析するための下準備として,名詞的に機能する前置詞のありようを検討し始めている。この方法は現時点では,少数の構文の分析にとどまっているが,同様の方法論を他の現象にも適用することで,よりは範囲の広い,変化・変種・変異の研究が可能となる。 さらに今後につながる研究として,大規模言語モデルが変種・変異・変化に関してどの程度の知識を持っているのかという新しいテーマに着手をし始めている。従来のコーパス言語学を拡張するような方法論の開拓は簡単ではないが,現在,共同研究者と,検討を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の二年目である2024年度は以下のような研究を行う予定である。 第一点目は,変種・変異・変化に注目をした構文の研究を行う上で基盤となるコーパスに関する理解を深める。現時点では,COCAやGLoWBeといった大規模なコーパスを用いた構文研究が一般的であるが,ジャンルに特化したコーパスなどにも注目することにより,理想化された知識とは対極にある,非均質的な知識のありようを探るためのデータや方法論に関して考察をしていく。第二に,深層学習や大規模言語モデルを用いた言語の実証的な方法論の開拓を進める。言語使用から立ち現れる言語知識を論じる方法論としての深層学習や大規模言語モデルに注目をして,具体的な分析手法を提案していく。同時に,深層学習という方法論を言語理論に位置付けるという作業をする。特に,用法基盤モデルを体現するツールとしての深層学習と大規模言語モデルの可能性を検討する。第三に,研究の核となるような興味深い構文やイディオム,または,言語使用における偏りなどを積極的に収集していく。 なお,2024年度は在外研究で8月からランカスター大学に在籍をする予定である。世界的なコーパス研究の拠点であるランカスター大学において様々なデータや方法論に触れながら,特に,実証的な言語データとは何かという問題意識を持ちながら研究を進める。
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