第二言語における発話音声の構造化―統語・音韻インターフェイスの視点から
Project/Area Number |
23K00687
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02100:Foreign language education-related
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Research Institution | Keiwa College |
Principal Investigator |
主濱 祐二 敬和学園大学, 人文学部, 准教授 (20547715)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 音韻と文法・意味 / フォーカス / 曖昧な前置詞句 / 統語・音韻インターフェイス / 発話産出 / プロソディー / 音調句 / 視線計測 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、句や節の構造と音のまとまりの対応が、第二言語ではどのように具現化されるか、統語・音韻インターフェイスの観点から分析する。発話や音読をリアルタイムな統語・音韻処理と捉え、(1) 修飾句や従属節を含む文が適切に分析される場合、どのような発音のまとまりで読まれるか、また(2) 初見で流暢に読める場合の文構造の先読みと抑揚の単位の関係について、統語構造の表示とポーズ、ピッチ、視線の計測を関連付けて実証的に調査する。生成文法にもとづく第二言語習得研究では必ずしも主流ではない音韻的アプローチから、熟達度の要因も考慮した文法知識と発音の関係を明示し、理論と教育実践の両面で言語習得研究に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の1年目に当たる2023年度は、自然言語の音声と文法・意味との相互関係および発音の特性に関する理論と実験手続きの理解に努めた。理論の応用する試みとして、日本語・英語・フィンランド語のフォーカス小辞(取り立て詞)の対照言語学的な事例研究を実施し、加えて母語話者と第2言語学習者の英語による発話の特徴と文法知識との関係についての予備調査も実施した。 「パンも食べた」のフォーカス小辞「も」が広い作用域を取り「(ほかの事柄に加えて)パンを食べもした」という解釈を許す現象はAnti-Pied-Pipingと呼ばれ、音声・文法・意味が交錯する現象であることから理論的に注目されている。事例研究としてこの現象をさらに深く分析し、日本語と同様にフィンランド語のフォーカス辞“-kin”も位相(フェーズ)単位の構造構築に従ってその分布、解釈、アクセント付与が決定・制限されることを示した。国際学会で発表した際のフィンランド語研究者との交流が、結果的に対照研究に結実することとなった。 事例研究をとおして理論の理解を深めた上で、理論を第2言語習得に応用するための予備調査に着手した。具体的には、“with the feather”や“behind the curtain”のような前置詞句を伴う曖昧文を発話するとき、意味や文脈に合う音調で発話できるかを母語話者と第2言語学習者で比較し分析を行った。中上級者は適切にポーズを用いて異なる意味を話し分けることができるが、初級者は意味は理解しているものの適切なポーズを用いることができなかった。母語話者の発話に顕著なスピードやピッチの緩急などの音韻特徴は学習者には観察されなかった。文法知識や意味解釈を反映する音声の習得は容易でないことが予備調査から示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた視線計測機器の購入は、予算の都合から2年目以降に延期することにしたので、その分初年度は研究に必須の基本概念や実験手続きの理解と、その応用のためのケーススタディーおよび予備調査に時間とエフォートを割くことができた。研究計画上の本調査に入るのは今年度(2024年度)からではあるが、初年度の研究成果をヨーロッパで2回発表できたこと、またその内容を、学内誌ではあるが英語で論文にまとめられたことは、次年度の本調査につながる着実な歩みであった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は音韻が文法・意味と密接に関連する言語現象の分析と第2言語習得への応用について、小規模ではあるが国際学会で発表するなど一定の成果を残すことができ、研究をとおして音韻中心のインターフェイス理論と実験方法についての理解を深めることができた。これを踏まえて、2年目に当たる2024年度は予備調査を発展させる形で本調査に移行していくことになる。 本調査の狙いは、第2言語における発話音声の特徴とその文法・意味・状況理解との関連を実証的な方法で解明し、理論の検証や更新に貢献することにある。今年度の前半で実験デザインの推敲を終え、中盤には装置を購入し使用できるよう設定を済ませ、被験者を確保しやすい後半の適切な時期に実験を実施する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)