Project/Area Number |
23K00983
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04020:Human geography-related
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山田 浩久 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (00271461)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 健康医療観光 / 地域構造変容 / 観光の組織化 / 観光の多様化 / COVID-19 / 東北地方 / 地域構造 / ホスピタリティ |
Outline of Research at the Start |
本研究は、COVID-19によって急変した地域社会に対応する観光施策の一つとして健康医療観光を提案し、同観光の進展が中長期的な地域構造変容に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。まず、山形県内で健康医療観光の実証実験を行う。次に、全国の市町村を対象にして、健康医療観光の可能性とその効果を検討し、健康医療観光と地域構造変容との間に成立する相互規定的な関係を説明する。なお、ここで言う「健康医療観光」とは、健康増進や高度医療受診のための移動をホスピタリティの提供に長けた観光関連事業者らがコーディネートする行為ないしは活動を指し、行楽を目的とする一般の「観光」とは異なる。
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Outline of Annual Research Achievements |
観光の多様化に伴い、日常生活圏を離れる計画的な移動に関わるホスピタリティの授受全般を「観光」と定義する昨今の思考に倣い、本研究では、受検、受診のための移動に関わるホスピタリティの授受を「健康医療観光」と呼び、その進展が地域構造に及ぼす影響を実証的に明らかにすることを目的とする。同時に、本研究は、観光の組織化と地域構造変容との間には相互規定的な関係が成立する、という報告者がこれまでの研究から得られた知見を学術的な背景としており、地域構造が健康医療観光の進展に及ぼす影響についても考察を加える。 先進医療を提供できる機関は限られており、国民全ての日常生活圏内に位置している訳ではない。特に、地方に居住する者が受検、受診を希望する場合は、日常生活圏を越える移動を余儀なくされる場合が多く、受入地は、旅行会社や宿泊事業者を中心に、観光に対する固定観念を刷新し、ホスピタリティの提供を多面的に考えていかなければならない。また、先進医療の整備には莫大な設備投資が必要であり、その稼働には多方面からの支援、協力が必要である。そのため、研究初年度にあたる2023年度は、まず、観光の多様化を整理し、その後、地域全体で当該地の価値を創造、向上させるプレイス・マーケティングが健康医療観光の進展に有効であることを示す調査分析を行い、それぞれを論文として公表した。さらに、健康医療観光のステークホルダーに対する聞き取りによって、自治体、医療機関、旅行会社には、先進医療をテーマとする移動を管理していくための理論や知識が不足しており、インバウンド旅行者の来訪も見据えた地域経営戦略(マネジメント)の早期構築が望まれることが明らかになったことから、観光地経営人材を育成するための資料をまとめ、その一部をデジタル書籍として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は本研究の研究初年度にあたる。そのため、観光の多様化を整理し、地域全体で当該地の価値を創造、向上させるプレイス・マーケティングが健康医療観光の進展に有効であることを示す調査分析を行い、それぞれの研究を論文として公表した。 応募時点での研究計画では、上記の研究に加えて、健康医療観光を共同で企画、考案した連携実績のある旅行会社に協力を仰ぎ、既に行った調査の結果を基に、モニターツアーを実施し、健康医療観光の段階的展開に関わる実証実験を行う予定であった。しかし、2023年に入ってCOVID-19の警戒レベルが引き下げ、解除されたことによって、観光地に行楽目的の旅行者が戻り始め、インバウンド旅行者も予想を上回る勢いで増加したために、観光事業者は少なからず混乱した。また、協力予定の旅行会社は来訪者の急増よりも、往訪者の添乗で多忙となり、実証実験を行うことができなくなってしまった。 来訪者、往訪者の数的な増加は、パンデミックによる移動制限の反動であり、新しいことを何もしなければ、観光後発地は後発のままになってしまうことは必至である。自治体、関連機関、事業所への聞き取り調査から、東北地方は、場所を売り込むプレイス・マーケティングに関する認識が低く、それを実践できる人材が少ないことが明らかになった。そこで、実行が難しくなった実証実験の代替として、健康医療観光のステークホルダーとの勉強会を開催し、そこでの議論によって、健康医療観光を進展させていくためのビジョンを明確にした上で、段階的な戦略策定を行うための知見を得ることにした。進捗を表す区分として「やや遅れている」を選択したのは、観光地経営人材を育成するための資料をまとめ、その一部をデジタル書籍として刊行したところまでで年度が終わってしまい、議論する場を作るには至らなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、COVID-19の警戒レベルが、引き下げ、撤廃されたことによる現場の混乱から実施できなかった健康医療観光の実証実験の代わりに、観光地経営人材を育成するための資料をまとめるところまでで終わったため、2024年度は、それらの資料を印刷書籍として出版し、それをテキストとして勉強会を企画、実施したい。現場で業務を行う医療機関職員、自治体職員、観光事業者と健康医療観光の可能性を議論することで、実践にかかる課題や方向性が明らかになると考える。なお、資料の一部は既にデジタル書籍として刊行しているため、全資料の刊行は2024年度の夏までには完了する。勉強会は、大学の地域連携関連の部署にも協力を依頼し夏季休業中に行う。 当初の予定より半期遅れることになるが、後期には、健康医療観光の段階的提案が可能な市町村の抽出を行う。全国1,718 市町村(北方領土の色丹村、泊村、留夜別村、留別村、紗那村、蕊取村を除く全市町村)を対象にして、健康医療施設及び観光関連施設の施設数、内容等に関するデータベースを作成する。次に、同データベースに基づき、健康医療観光を実践できる施設がある市町村を選別する予定であるが、先進医療を行うことができる医療機関が存在する市町村は限られるため、先進医療の内容を固定すれば、中核になる市町村はデータベースを使うことなく抽出できる。データベースは周辺の市町村との関係(中核となる市町村の突出性等の評価)を考察するために使用することになるかもしれない。また、健康医療観光に限らず、観光を企画、実践するためのステークホルダー間の調整は、DMO(観光地域づくり法人)が担うことが多くなりつつあるため、整備が進んでいるDMOの抽出を行い、健康医療観光の中核市町村との連結性を考慮しながら、現地調査の対象地域を選定する。なお、現地調査は2025年度に行う予定である。
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