Project/Area Number |
23K00994
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04020:Human geography-related
|
Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
三木 理史 奈良大学, 文学部, 教授 (60239209)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2027: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
|
Keywords | 釧路鉄道 / 岩内馬車鉄道 / 北海道 / 積雪 / 十勝平野 / 甜菜 / 北海道拓殖費補助 / 軌間762㎜鉄道 / 鉄道休廃止 / 近現代日本 / 公文書管理制度 / 沿線地域 / 事業者 |
Outline of Research at the Start |
コロナ禍による利用減少に伴い再燃した全国の鉄軌道休廃止の議論は、鉄軌道の利用減少を安易に休廃止と結びつける場合が少なくない。最近年を切り取れば運輸・観光業界の低迷と利用減少が直接結びつくことも多いが、150年間断続してきた日本の鉄軌道休廃止は必ずしも利用減少のみが原因ではないことが明らかとなった。本研究は、近年の人口減少地域を中心に社会問題化している鉄軌道の休廃止を、単に沿線自治体を含む利用者側の存続論のみならず、事業者側の論理にも着目し、その多様性を明らかにする。鉄軌道事業者の休廃止の選択は、輸送減少のみならず、既存設備で効率的輸送が困難と判断したことも要因を成してきたことを解明する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主たる実績は、釧路と岩内について北海道開拓期の鉄道休廃止を、十勝平野における休廃止を明らかにした。 まず釧路鉄道は、幹線鉄道さえ未形成の道東地域の硫黄山経営への安田善次郎の参画を機に、専用鉄道を一般運輸に変更したものである。通年の約3分1の期間が冬季休業となった。1896年7月の硫黄山の採掘中止で休止され、その後北海道庁が釧路鉄道を買収した。それを鉄道買収とみる北海道庁の立場と、車両や資材転用目的とみる会計検査院の見解の相違から紛糾した。岩内馬車鉄道は、函樽鉄道(北海道鉄道)経路から外れた岩内町の有志が、同線への連絡向けに建設したが、積雪のため通年約3分1の期間に休業を余儀なくされた。同社は、休業で保線費や車両維持費の節約で営業収益をあげた。開業から数年で国鉄による軽便鉄道建設が決定し、それへの路線提供によって廃止が決定した。 つぎに十勝平野における局地鉄道路線網を形成した十勝、河西両鉄道と北海道拓殖鉄道の休廃止の経緯を検証した。十勝平野では19世紀末から豆や根菜類と並び甜菜栽培を開始したが、その作付面積は拡大しなかった。国鉄根室(本)線を基軸に、1920年代に北海道製糖が帯広町に、ついで日本甜菜製糖が人舞村に、軌間762㎜の専用鉄道を建設し、各々一般営業も行う十勝鉄道と河西鉄道に発展した。他方近隣関係者や在京資本家などが開拓を目的に1067㎜の北海道拓殖鉄道を設立した。3つの局地鉄道は、開拓地の輸送機関として機能したが、1930年代後半の拓殖費補助期間満了を機に十勝鉄道が不採算路線整理に着手した。戦中期の糖業統合で十勝鉄道は河西鉄道を合併したが、1950年代に自動車との対抗困難な旧河西鉄道線を廃止した。また旧十勝鉄道線も糖業原料や製品輸送の意義を失ない廃止となり、1960年代後半に北海道拓殖鉄道線も廃止された。 また岐阜県庁文書、静岡県庁文書の調査を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はCOVID-19の五類移行によって現地調査の制約も少なくなり、資料調査も現地調査も比較的順調に実施することができた。 また岐阜県歴史資料館、滋賀県立公文書館、福井県文書館、静岡県公文書センター、千葉県文書館などで鉄軌道の休廃止に関わる公文書の収集に努めた。その結果本研究の主題を成す北海道開拓期の鉄道休廃止を、十勝平野における休廃止に関する論文を公表することができた。また印刷中あるいは受理済みのものとしては、福岡県上山田線の国鉄特定地方交通線対策に関する研究(『奈良大地理』印刷中)、および「『企業ぐるみ閉山』による炭鉱集落崩壊と鉄道廃止」(『経営史学』掲載決定)がある。また鉄道休廃止に関わる先行研究を収集、整理し、今後の展望を述べた「縮小史観角度的日本鉄道史研究-回願与展望」(中文)(祝曙光他主編『鉄道史研究』第二輯、印刷中)も公表予定となっている。 今後は今年度に収集できた資料の分析を進め、それを口頭発表あるいは論文として公表してゆくことに努めてゆきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は主に地方閑散路線を対象とした研究を推進してきたため、次年度以降はそこから漏れた都市近郊路線、および大都市電気軌道を対象とした研究も行う予定である。 まず都市近郊路線では、1970年代の三重県四日市市近郊の近鉄八王子線の部分廃止問題を三重県行政文書を用いて明らかにする研究をまとめることに尽力する。一方、大都市電気軌道では戦後高度成長期の大阪市を事例に、財政再建制度に着目して無軌条電車も含めて大規模休廃止が進行した過程を明らかにする研究のまとめに尽力する。 これらを明らかにすることで、鉄軌道休廃止の中で欠落してきた対象に光を当てることが可能になるものと考える。また1970年代の北海道における炭鉱集落崩壊と鉄道休廃止を議論した「『企業ぐるみ閉山』による炭鉱集落崩壊と鉄道廃止」(『経営史学』掲載決定)や「縮小史観角度的日本鉄道史研究-回願与展望」(中文)(祝曙光他主編『鉄道史研究』第二輯、印刷中)などの成果も公表できる予定となっている。 他方昨年度につづいて岐阜県庁文書、千葉県庁文書などの調査および資料撮影を進めることで、新たな資料発掘にも努めてゆきたい。また福岡県や静岡県などで進めてきた県庁文書の収集にもとづき、国鉄地方交通線の廃止に関わる論文の執筆にも着手する。また機会をみて学会発表等にも尽力したいと考える。
|