インフォーマントと紡ぐトルコ農村民族誌――「近代化」「現代化」論の検討を背景 に
Project/Area Number |
23K01042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
中山 紀子 中部大学, 国際関係学部, 教授 (00288698)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | トルコ / 農村 / 民族誌 / インフォーマント / 近代化 / 現代化 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、申請者が30年前にトルコのある村で行なった現地調査をもとに書いた自著『イスラームの性と俗――トルコ農村女性の民族誌』(1999年出版)のトルコ語訳を調査地の村の人々に読んでもらい、村の人々と議論しながらあらたなトルコ農村民族誌を描くことである。その議論にはトルコ語訳を担当したトルコ人社会学者にも研究協力者として加わってもらう。24年前に出版された民族誌を共有し、調査地の人々、社会学者、申請者という三者でより豊かな民族誌を紡ぎだすことを目指す。この共同作業は「学ぶ者―学ばれる者」という、ともすれば陥りがちな上下の権力関係を平準化し相対化する意義をもつ。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、報告者が30年前にトルコのある村で行なった現地調査をもとに書いた自著『イスラームの性と俗:トルコ農村女性の民族誌』(1999年出版)のトルコ語訳本であるKoy Kadini, Modernite ve Islam: Bir Antropologun Gozunden 1990'larin Turkiyesi 2. Baski(2021年出版、邦題『村の女性、近代、イスラーム:ある人類学者のみた1990年代のトルコ』)を調査地の村の人々に読んでもらい、村の人々と議論しながらあらたなトルコ農村民族誌を描くことである。その議論には、調査者の人々以外に、トルコ語訳を担当したトルコ人社会学者トルガ・オズシェン氏(Prof. Dr. Tolga Ozsen)にも研究協力者として加わってもらい、調査地の人々、社会学者、報告者という三者でより豊かな民族誌を紡ぎだすことを目指している。 本研究の初年度である2023年に本研究の目的を果たすべく、コロナ禍のため3年間以上行くことのできなかったトルコを訪問し、調査地の人々に当該トルコ語訳本を直接渡すことができた。調査地の人々はたいそう喜んでくれて、そのうちの一人の提案により、SNS上で読者グループをつくり、本について読後の感想や意見を集める場とした。すでにこれまでに本の内容や本に掲載した写真などについての複数の意見をもらっている。また村出身であるが現在はドイツに移住している人々には要望に応じて本を郵送している。 研究協力者であるトルコ人社会学者トルガ・オズシェン氏とも2023年度に2回直接会って、「近代化」「現代化」の議論を行っている。彼自身のみならず彼の学生たちや、トルコ語訳本を読んだ別の大学の学生たちとも意見交換を行う機会を得た。また、関連する学会に参加し、関心の射程や範囲を広げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は2023年9月、11月、2024年3月の3回にわたってフィールドワーク地を訪問し、調査地の多数の人々と面談することが可能になった。複数回訪問したことで初回に渡したトルコ語訳本の内容について後日意見を得ることもあった。そのひとつに、葬儀の際に女性たちが死者の出た家に集まったときに、マッチを擦って火をつけ、すぐに消すという行為がある。そのような行為が行われていたとは知らなかったとするインフォーマントが多いなか、この行為は当時でも頻繁に行われていたとはいえないが、昔から行われていた行為であり、イスラーム以前の自然(火)に対する信仰の名残ではないかと解釈する人もいた。このように本の内容に関する議論自体が村の歴史を呼び起こす契機となっている。 また、本研究の「近代化」「現代化」に関する議論には若い世代の意見が重要であるが、研究協力者のオズシェン氏が2023年6月に日本への学生引率の際に報告者の勤務大学を訪問して彼の学生たちと意見交換することができた。さらに2024年3月には報告者がオズシェン氏の所属するチャナッカレ・オンセキズ・マルト大学で「嫉妬」というテーマで講演し、とくにナンパに対する日本とトルコの男性たちの対応の違いから、男女関係を個人的ではなく社会的に、あるいは生物学的ではなく社会的に考える必要を示唆した。また2024年1月には、トルコ語翻訳本を読んだトルコのカイセリ大学の大学院生たちとオンラインで当該本について議論する機会を得た。 2023年11月にトルコのアンタルヤ市で開かれた世界性科学会(World Association for Sexology 略称;WAS)に聴講参加した。トルコに特化した学会ではなかったが、性教育はトルコの「現代化」を考える際に重要な要因であるため、有益な情報を得て本研究の関心の射程や範囲を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を踏まえて、さらに複数回フィールドワーク地を訪問し、多くのインフォーマントたちと面談し、新たなトルコ農村民族誌の準備をする。とくに30年前の調査時から現在までどのように過ごしてきたのかについて、調査地の人々のライフヒストリーを集めたい。できれば調査地の村からドイツに移住した人々と面談を試みる。ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州やバーデン=ヴュルテンベルク州に住む調査地の村出身の女性たち3人と連絡がとれているので彼女らを訪問して聞き取り調査を行う。また、日本にいるときは、トルコ語訳本について読後の感想や意見を集める場としてSNS上に作った読者グループを活用して聞き取りを行う。 研究協力者のオズシェン氏とは引き続きお互いの学生の交流や意見交換も含めて「近代化」「現代化」の議論を進める。なお、2024年6月には報告者の勤務大学でトルコと日本社会を比較するシンポジウム「家族、女性、教育、価値観を軸にトルコと日本社会を考える」を開催し、オズシェン氏にも講演をしてもらうことになっている。このシンポジウムは日本トルコ外交関係樹立100周年にあたる今年2024年の公式の記念行事として認定されている。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)