《戦時体制》から《戦後体制》へ――日本近現代法史の新たな時代区分と方法論の試み
Project/Area Number |
23K01065
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05010:Legal theory and history-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
出口 雄一 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (10387095)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 戦後体制 / 戦時体制 / 時代区分論 / 日本法制史 / 日本近現代史 |
Outline of Research at the Start |
本研究においては、これまで日本近代法制史において用いられてきた時代区分論について再検討を試み、《戦時体制》から《戦後体制》への転換が1950年代において生じ、後者が既に終焉を迎えつつあるという認識の上で、「戦後」をも含めた新たな時代区分論の提示を試みる。 その作業を通じて、日本の「戦後」という時空間における近現代法制史のあり方を「歴史化」することで、隣接学問領域と対話可能な新たな学問的手法と方法論を構築することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本研究の問題意識を深めるために、主として《戦後体制》のあり方を長期のスパンで実証的に明らかにすることを念頭に置いた研究を主眼として活動を行った。 具体的には、1)「革命と法」を共通テーマとする法文化学会研究大会において、主として戦後のマルクス主義法学のたどった歴史を、法社会学の学問方法論の独立、更に、実定法学における法解釈方法論の変容に即して分析した報告を行い(10月21日)、併せて、2)法制史学会東京部会において開催された伊藤孝夫氏の『日本近代法史講義』(有斐閣、2023年)の合評会において、主として戦時期から現代に至るまでの時期を中心とする書評報告を行った。これらはいずれも、2024年度以降に活字化する予定である。 また、時代区分について検討する視角を多角的なものとするため、3)戦時下の法と法学のあり方を扱ってきた戦時法研究会において、法制史にとどまらず宗教史の知見をも踏まえた「国体」のあり方について、大本教事件をめぐる言説空間に関する報告を行い(7月29日)、後に活字化したほか、4)同じく戦時法研究会において、上述の法文化学会の報告とも関わり、《戦後体制》を法的に区分する際に大きな影響をもっていたマルクス主義法学の担い手である長谷川正安についての報告を行い(12月23日)、加えて、5)日本の《戦後体制》の構築に大きく関係した東京裁判に関する海外シンポジウム記録の書評を公表した。 更に、6)9月4日から13日にかけてアメリカ国立公文書館において史料調査を行い、1950年代の占領管理体制への朝鮮戦争の影響にかかわる史料を探索し、国内においても、国立国会図書館や東京大学近代日本法政史料センターにおいて《戦後体制》の構築と関連の深い法学者の史料を調査・収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、これまでの準備作業に基づいて、1)及び2)に掲記した報告において、日本近現代法制史の時代区分の枠組みを改めて確認すると共に、4)及び5)に掲記した研究において、《戦後体制》の時代区分に資する個別の実証研究を蓄積することが出来た。この方向の実証研究を更に積み重ねることで、2024年度以降の研究において、従来必ずしも蓄積が多いとは言えない、戦後期を対象とする法の歴史の把握についての見取り図を描くことが可能になるものと思われる。 一方で、6)において掲記した調査において解明を目指した、《戦時体制》から《戦後体制》への以降の画期となる占領管理体制の法的あり方については、占領軍の管轄の複雑さもあり、アメリカ国立公文書館における史料調査の成果は必ずしも十分なものではなかった。この点は更に検討を進め、史料の発掘に務めたい。また、《戦時体制》の法的把握についての実証研究についても、2023年度においては、3)に示した新しい観点からの研究を公表することが出来たものの、より一層の個別的実証研究を行う必要性があることが2023年度の研究から認識することが出来た。この点は、2024年度以降に特定の法学者や法的事象に対象を絞って、さらなる研究を進めることとしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、《戦時体制》から《戦後体制》へと法的な転換が発生した占領管理体制の終結前後の法と法学のあり方を実証的に検討するため、「占領法規」の中核をなしたポツダム命令がこの転換においてどのように処理されたのか、また、朝鮮戦争の勃発という「戦時」における治安対策と再軍備に対する法的措置がどのようなものであったかを、当時の国内外の環境について隣接領域、特に日本政治外交史や国際関係論の業績を踏まえて改めて検討し、併せて、この時期の法的枠組みの転換に早期に着目していた戦後のマルクス主義法学の学知が持っていた意義についても、実定法学における行政法の解釈方法論と比較しながら検討を行いたい。 併せて、これまで概要を示すことにとどまっていた《戦時体制》の法的特色についても、特に経済法・社会法などの新たな法領域や法社会学・法制史などの基礎法学の担い手となった法学者たちの端緒的な営為、及び、戦時経済統制を実施するために発出された個別の立法とその運用のあり方について、その制定及び運用過程に史料に即して具体的にアプローチすることで、《戦時体制》に関する時代区分についての実証性を上げ、より精緻なものとするための材料を揃えることとしたい。 加えて、《戦後体制》への転換の重要な局面を画した占領後期における法的構造の解明のために、アメリカ国立公文書館における史料調査を継続すると共に、国内の各史料所蔵機関についても、国立公文書館や各大学の資料室なども調査対象として加え、より広い観点から実証研究を行うことを試みたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)