訴訟における情報・証拠の収集に関する研究(行政訴訟における方策との比較を通じて)
Project/Area Number |
23K01179
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
|
Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
濱崎 録 西南学院大学, 法学部, 教授 (90432773)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
|
Keywords | 民事訴訟法 / 事案解明義務 / 釈明処分の特則 / 文書提出命令 / 証明困難の軽減 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、行政訴訟における情報や証拠の収集手段である釈明処分の特則をおもな対象としている。この釈明処分の特則は、行政訴訟分野において、事案解明義務が具体化した規定と解されている。 そこで、本研究では、①この文脈で用いられている事案解明義務が、民事訴訟法において証明責任を負わない当事者が証拠収集に協力すべき義務として論じられる事案解明義務と同一あるいは同質であるかを明らかにする。また、②同一であるとして、行政訴訟と民事訴訟の相違点を考慮してもなお、民事訴訟における証明責任を負わない当事者の義務を事案解明義務によるとすることが可能か、という問題について、分野横断的視点から明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマでは、行政訴訟における事案解明義務について、その内容を明らかにし、民行政訴訟における事案解明義務と民事訴訟におけるそれとを比較したうえで、民事訴訟において、情報や証拠が一方当事者等に偏在している場合を中心に、民事訴訟における事案解明義務の根拠やその外延を明らかにし、立証困難の解消のための理論構築を目指すものである。 その第一歩として、2023年度は、令和3年5月31日仙台高裁決定を検討題材として、行政事件訴訟法23条の2に規定のある「釈明処分の特則」について検討を行った。検討においては、民訴法の釈明処分の規定(民訴法151条)と行訴法における釈明処分の特則の相違点をまず明らかにした。そのうえで、損害賠償請求事件を基本事件とする上記事案において、いわゆる「審査請求に係る事件の記録」の文書提出義務について考察した。この考察に際して、釈明処分の特則が民訴法における規定と比較して、いかなる点で「特則」たる位置づけと理解すべきかが重要なポイントとなった。また、上記事案で問題となった釈明処分を受けた行政庁が正当な理由なく問題となった文書の提出を拒否することは理論上はありうること、そのように行政庁が提出を拒否した場合、そのような未提出について直接の制裁は存在しないこと、この点について、証明責任を負わない当事者の事案解明義務を用いて説明することも考え得ることを指摘した。これにより、行政訴訟における事案解明義務と民事訴訟におけるそれとの連結点を示した。 考察の一部は、拙稿「行政処分に対する審査請求に係る事件の記録の自己利用文書該当性」私法判例リマークス67号110-113頁において公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、特に後期に入って、当初の想定を超えて学内外の業務の依頼が種々あったことにより、エフォート通りに研究を進めることが難しくなった。 また、行政訴訟における事案解明義務に関する議論状況を調査したものの、専門領域外の文献調査に通常よりも時間を要したことも研究が遅れがちな要因の1つとなった。加えて、釈明処分の特則に関する立法時の議論について、想定したような議論があまりなされておらず、この点についても、今後の研究を進めるにあたっての仮説の再設定が必要となったことがさらに本研究の進捗の遅れにつながっている。ただし、特に最後の理由は、むしろ民事訴訟における事案解明義務と行政訴訟における事案解明義務との違いを整理するうえでは、情報がないことそれ自体が重要な意義を持つと思われるため、次年度における仮説の再設定に役立つ積極的な材料と位置づけうると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度の研究の進捗の若干の遅れを取り戻すため、①仮説を再設定すること、②行政法分野の研究者からアドバイスを受けることの2点によって研究の推進を図る。 具体的には、2023年度に検討題材のひとつとした釈明処分の特則に関する裁判例(仙台高裁令和3年5月31日決定)に加えて、事案解明義務が用いられたリーディングケースとされてきた伊方原発訴訟等の複数の裁判例を整理するなかで、被告行政庁に主張・証明責任を負わない当事者の事案解明義務」を課す根拠として、行政法分野で論じられている行政庁の「調査義務・説明義務」の内容や根拠について整理を行い、これらが上記の各事案においてどのようなかたちで顕在化し、事案解明義務の議論とつながっているのかを明らかにする。また、行政庁の調査義務・説明義務についての最近の議論状況について、前任校および現在の勤務校の行政法分野の同僚に具体的な問題意識を伝えて、アドバイスを求めることにしたい。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)