Project/Area Number |
23K01458
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07060:Money and finance-related
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
瀧野 一洋 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (60553138)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 担保つき派生証券取引 / 中央清算機関の行動 / 最適担保量の決定 / 社会厚生 |
Outline of Research at the Start |
本申請課題では,担保付き派生証券市場に対する均衡モデルを構築し,実際の派生証券取引における担保制度の是非を検証する.申請者は近年,均衡理論を用いて担保付き派生証券の需給均衡モデルを構築し,担保量が派生証券の取引量に与える影響と,債務不履行リスクが派生証券市場における社会厚生に与える影響をミクロ経済的に解明してきた.本申請課題では,自身のこれまでの研究を拡張させて, ①担保量を増やすと取引量が低下するにも関わらず,なぜ比較的大きな担保量を受け渡す制度が適用されているのかを明らかにする, ②担保の受渡方法と社会厚生との関係性を示し,派生証券の取引形態の違いを通じて担保制度の是非を検討する.
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Outline of Annual Research Achievements |
研究課題は,金融派生証券の取引に対して受け渡される担保について,社会厚生の観点から最適な担保量を明らかにすることである.このため,取引に参加する経済主体の最適化問題を設定し解析する必要がある.2023年度はまず,取引を仲介する清算機関が何を目的に清算業務を実施するのか,すなわち当該機関の経済的なモデル化に着手した. 複数の先行研究を調査した結果,清算機関が派生証券の投資家に請求する担保量は,自社の利益を最大にするように決定されるモデル化と,株主である投資家の利益を最大にするように決定されるモデル化が考案されていることが分かった.これを受けて,どちらのモデル化がより現実的に清算機関の行動を描くかを検証した. まず,請求する担保量を減らすと清算量が増え収益が増加するが投資家の破綻時における損失が増大するモデル化を収益最大モデル(以下,PMモデル)と設定,次に請求する担保量を減らすと投資家の資金調達費用が減り彼らの収益は増加するが投資家の破綻時における損失が増大するモデル化を社会計画者モデル(以下,SPモデル)と設定した.いずれも利益とリスクとのトレードオフ関係を表現できており,数学的には非線形な最適化問題が構築されているので,それぞれの問題における最適な担保請求量を求めることができた. 以上のように最適な担保請求量を求める数理的な公式が得られたため,モデルに含まれるパラメータを9つの清算機関の財務データから推計し,その下での担保請求量が実際に請求された担保量との差を求めることで,どちらのモデル化が現実の清算機関の行動を表現するかを判定する.結果として,PMモデルの方が差が小さくなったため,清算機関は自社の利益を最大にするように担保を請求すると結論づけた.この結果は,2023年7月に韓国で行われた経済,金融工学の国際会議で口頭で報告し,現在は国際的な学術誌に投稿している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では派生証券の最終的な投資家だけでなく,それを仲介する清算機関の行動を考慮に入れる必要がある.投資家の行動については,自身の先行研究で数多く取り扱っていることから,本研究課題においてもそれらを応用する予定であるが,清算機関を考慮に入れるのは本研究課題が初めてであるため,その数理的かつ経済的なモデル化が必要となる.別言すると,契約者は単に自身の利益や効用を最大にするように行動することを想定すれば十分であるが,他方,清算機関はその公的な立場から,誰の利益を優先させるかが意見の分かれるところである. 2023年度の研究では,清算機関が自社の利益を最大にするように担保を請求することが明らかになったため,投資家らが受け入れたいと思う担保量と併せて,派生証券契約だけでなく担保についても均衡を求めることができるようになった.この均衡の下で,各投資家の効用水準を観察することで,経済厚生の観点から望ましい担保の大きさを求めることができるようになる.このように,24年度以降の研究実施内容の準備が整ったため,本研究課題の進捗状況は順調と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,金融派生証券取引を取り継ぐ清算機関の経済的モデル化を実施した.この結果を用いて2024年度以降は,均衡において清算機関を仲介しない場合の派生証券取引と,仲介した場合の派生証券取引とでは,どちらの取引形態が社会厚生を拡大させるかを明らかにする.また取引形態は担保の請求方法にも違いをもたらすため,社会厚生上望ましい担保契約の在り方についても示すことができる.このようにして,本研究課題の目的を達成させる.
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