Project/Area Number |
23K01760
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
矢吹 康夫 中京大学, 教養教育研究院, 講師 (40727096)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ルッキズム / 差別論 / 障害の社会モデル / レイシャル・プロファイリング / スティグマの可視性 / 外見差別 / 見た目問題 |
Outline of Research at the Start |
外見差別/ルッキズムをめぐっては、重なり合う他の差別問題との関係を検討することが不可欠である。そこで本研究では、他の差別問題には回収されないルッキズム独自の問題とは何なのかを問いに設定する。この問いを明らかにするために、1:履歴書の顔写真の有無による評価の違いについてのウェブ調査、2:不審事由がないにもかかわらず頻繁に職務質問を受ける人びとの経験の把握、3:見た目問題の運動を支持する非当事者の論理という個別の課題に取り組む。これらの作業は、現在、拡散・混乱しているルッキズム概念を理論的に精緻化する試みであり、インターセクショナリティ概念を用いて多様な差別問題にアプローチするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ルッキズムと重なり合う側面も多い他の差別問題との関係性を整理し、ルッキズム固有の問題を明らかにすることであり、2023年度は、次のような成果を発表した。 『THINK』誌上において、ルッキズムと性差別(セクシズム)、人種差別(レイシズム)などが交差する事例について、差別論の枠組みを用いてレビューした。履歴書の写真や学校校則、企業の服装規定などは、外見から判別できる属性を指標にしており、そこで行われている不当な取扱いは、ルッキズムであると同時にレイシズム、セクシズムでもある。 『レイシャル・プロファイリング』では、警察による人種差別的な職務質問において、現場の警察官がどのようにして外見から不審点を見出しているのかを検討した論文を分担執筆した。警察組織内で共有されている職務質問技能においては、警察官の「直感・違和感」という経験知に頼った選別が行われており、外国人であることはそれだけで不審点とされてしまうのである。 『障害学の展開』では、障害の社会モデルの可能性を押し広げる「できるように強いる社会」の対象化を達成するために、アルビノ研究が障害学にはたした理論的貢献を概説する論文を分担執筆した。とりわけ、アルビノの外見をめぐる困難は、「できないこと」がないにもかかわらず、現実に差別されていることから出発する社会モデル的な視点があったから対象化できたのである。 日本オーラル・ヒストリー学会での報告では、アーヴィング・ゴフマンのスティグマの可視性をめぐる議論を検討した。そこでは、スティグマとなる特徴が「見える/見えない」ことと、それについて「知っている/知らない」こととを峻別する必要性を論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルッキズムと重なり合う側面も多い他の差別問題との関係性を整理し、ルッキズム固有の問題を明らかにするという本研究の目的にとって、『THINK』におけるレビューは、素描的なものではあるが、多様な論点を整理するうえで重要な作業となった。また、『THINK』での差別論、『障害学の展開』での障害の社会モデル、日本オーラル・ヒストリー学会報告でのスティグマの可視性など、ルッキズムとして問題化する事象を検討するうえでの理論的な枠組みの有用性を精査できたことも前進である。 さらに、申請者のこれまでの研究蓄積は主に障害やユニークフェイス/見た目問題であったが、2023年度は、『レイシャル・プロファイリング』において、人種差別へと対象を広げていく足がかりを築くことができた。 『現代思想』と『理論と動態』にそれぞれ所収された論文は、申請者のこれまでの調査・研究を振り返り、フィールドにおける調査者のポジショナリティやコミュニティの動態について論じたものであり、これらは、本研究の独創性のひとつであるインターセクショナルな調査・研究を実施するうえで不可欠な視点である。 以上のような理由から、進捗状況はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、予定していた、履歴書に貼付される顔写真の有無による評価の影響と、職務質問における多様な差別の実態についての調査は実施できていないが、これまでの研究において実査に必要な作業は完了しており、2024年度以降に実施する予定である。また、【研究実績の概要】と【現在までの進捗状況】でも述べたとおり、2023年は、理論と調査方法論を精査し、対象を拡大する足がかりを築くことができたので、2024年は、これまでの作業をふまえた実査と、結果の分析に取り組む予定である。
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