Project/Area Number |
23K02153
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白水 浩信 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (90322198)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 近代教育思想 / discipline / education / 16世紀イギリス / EEBO / 規律 / 教導的なるもの / 語彙史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,西欧近代におけるeducation≒discipline言説の地滑り的変化を史料に即して検証し,なぜ,いかにしてeducationはdisciplineに置き換えられ,僭称されるに到ったのか,その言説形式の変化に即して用例データを記述・整理し,その機序の解明と後世への影響を語彙史研究として提示するものである。そのことを通して,教育学が暗黙のうちに前提としてきた,educationを教導的なるものとして措定する思考の由来を解明し,近代教育学が抱え込むに到った教導的なるものという歴史的ア・プリオリをdisciplineの系譜学として世に問うことを企図するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代教育思想におけるdisciplineの用例をeducationとの関係から分析するものであり、両語彙の混淆が進む15~16世紀に焦点をあて、デジタル・アーカイブを用いて用例を抽出し、検討することを目的とする。 研究初年度である本年は、大英図書館所蔵の初期近代文献集成(EEBO)を用い、1470~1630年代にかけてeducation及びdisciplineの用例を本文検索し、3727編にのぼる文献を抽出することができた。これらの文献の主題、各語の出現度数とその時系列変化、また両語がともに現れる際の文脈等について検証し、一覧表に整理した。 educationに関しては、1525年のアウグスティヌス修道規則にはじまり、期間中、1657編の文献で用いられている。ただしその大半(1340編)はせいぜい1~3回の用例であり、16世紀半ばまで散発的にしか用いられていなかったことが判明した。educationの用例数が次第に増加するのは1560年代以降、特にラテン語からの英訳作品を通じてである。そのなかにはプルタルコスのラテン語訳、ビベス、エラスムスなども含まれる。今後、これらラテン語底本とその英訳を照合をすることで、16世紀におけるeducationの受容と語彙関係に迫ることもできよう。 disciplineについてもデータは抽出してある。ただしdisciplineの初出は少なくとも13世紀に遡り、EEBOに収録された1470年代から多くの用例が確認される(3062編)。特に宗教改革以降、プロテスタントとカトリック両派からの宗教論争、典礼や教会法、信徒の生活様式等に関わる議論に頻出しており、ほかに軍事、礼儀作法書、君主教育論がわずかにみられる程度である。educationとdisciplineが同一文で用いられるのは、偽セネカからの引用を英訳したケースに限られることも興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当初の計画では、各年度、順次、イギリス、フランス、ドイツと検索、データ整理・分析を進める予定であった。初年度、イギリスについてEEBOを用いて作業をはじめると、disciplineの用例を含む文献数が予想以上に多く、すべての文献の主題を分類し、用例の文脈を特定するには至らなかった。この点、次年度に持ち越さざるをえない。またEEBOのライセンス契約を結んでいる図書館に赴いて作業を進める手筈であったが、検索結果を閲覧することのみが許可され、データのダウンロードはできないところが大半であった。やむをえず、ミシガン大学が無料で提供しているEEBO-TCPを利用してデータベースを構築するところまで漕ぎつけたことは不幸中の幸いであった。その後、国会図書館を訪れ、Proquest社から提供されているEEBOの検索結果と比較したが、数件の更新データの差分の違いのみで、作業を根本的に見直す必要はなかった。 こうしたことを除けば、概ね作業は順調に進捗している。EEBO-TCPから語彙用例を本文検索して悉皆抽出し、エクセルで閲覧・検証しやすいようにデータを整形することについても熟達してきた。すでに用例件数のデータベースには3700件以上が登録され、上述の通り、educationとdisciplineがどのような文献で同時に現れ、その頻度はいかほどであるか、一目瞭然となっている。特に重要と思われる文献350件余については、個別に用例を抽出してファイルにまとめてあるので、今後、具体的な用例分析を進められる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
採択2年目はフランス語の用例について検討作業を進めることにしている。すでに初年度にも試行作業を進めてある。EEBOのような悉皆抽出が可能なコーパスがないので、フランスについてはフランス国立図書館が提供するデジタル・アーカイブ、Gallicaに依らざるをえず、網羅的な本文検索という点では限界がある。とはいえ、イギリスの用例データベースが概ね完成してきたので、それと比較しながら、タイトル及び主題情報を手がかりに文献を選定し、用例検索を試みることにしている。特にeducationとdisciplineの関係を追跡する際、翻訳文献が重要になることも分かってきた。15~16世紀を中心にラテン語からフランス語に翻訳された文献に焦点を当てながら、disciplineがeducationと同一視されていく歴史的過程に迫っていきたいと考えている。 なお、初年度の英語用例の抽出、整理、分析作業にやや遅れが生じていることに鑑み、英語education-discipline用例に関するデータベースの完成も視野に入れておかなければならない。フランス語の用例データベース構築と同時進行にならざるをえず、次年度は拙速にドイツ語まで対象範囲を拡大するのではなく、前半くらいまでかけて、英語及びフランス語の用例を丁寧にデータベース化することを目指すべきだと考えている。
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