Project/Area Number |
23K02225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09020:Sociology of education-related
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Research Institution | Shokei University |
Principal Investigator |
水谷 智彦 尚絅大学, 生活科学部, 講師 (00791427)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 罰 / 罰則 / 学校規則 / 学校管理法書 / 相互行為儀礼 / 規律訓練 / 教師 / 児童 / 校則 / 管理 / 規律 / 歴史社会学 |
Outline of Research at the Start |
本研究課題は近代学校成立期における罰に関する言説や実践の構成過程に着目し、学校での罰が人間形成と社会秩序の形成、維持という点でどのような意味を担わされ、実践されてきたのかを解明することを目的とする。とりわけ、明治期の日本で学校教育に関わる言説を構成する重要な要因となったアメリカやイギリスの学校管理論や、同時代の刑罰や心理学といった教育領域外の言説への言及関係に着目しつつ、学校での罰の言説編成の諸相を明らかにする。加えて明治期に各地学校で教師によって作成、記録された「懲戒簿」や「個性調査簿」といった表簿等の一次史料を手がかりに、学校での罰の実践の様相を解明することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な成果は、これまでの研究実績をまとめた博士学位申請論文「教育と罰の歴史社会学ー明治期小学校の罰をめぐる制度と言説に着目してー」を2023年11月に立教大学へ提出し、2024年3月に博士(教育学)の学位を取得したことである。同論文では、先行研究において否定的な意味を与えられてきた学校規則と罰の意義を問い直すという目的から、近代学校成立期である明治期日本の学校規則や罰則の制定、および罰に関わる言説に着目し、分析をおこなったものである。分析から得られた知見は、学校での罰には二つの性質がみられたことである。一つ目は、儀礼的な性質である。学校での罰には、児童たちに規則を守ることの意味を伝え、また積極的に彼らを規則の擁護者として形成するという意味が付与されていた。この点は、学校での罰を否定的に捉える視点からは掴めない罰の意義である。知見の二つ目は、罰の治療的な性質である。1890年頃より、学校での罰は逸脱児童の性格や性質を治療、矯正するという意味が付与されていた。この言説は、従来指摘されてこなかったものであり、同時期における刑法や感化院等の未成年処遇制度やそれに関わる言説のなかにもみられなかったものである。ただし、いかにしてこの治療としての罰という言説が日本で成立しえのたかは明らかにできなかった。今後の課題は、以上のように言説上で二つの性質を付与されていた罰が、当時の教師によっていかに実践されていたかを一次史料をもとに問うことであるとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の主な研究成果である博士学位申請論文は、2022年度中に提出予定であったが間に合わず、2023年度の成果となったものである。そのため、研究計画調書において本年度の研究内容に挙げていた「日本近代における英米学校管理論の受容と生徒の懲戒方法論の構成過程」については、博士論文中の一章を構成するものとして盛り込んだものの、内容は従来の研究成果をまとめたものにとどまり、新たな知見の獲得や議論の深化ができなかった。また博士学位申請論文の審査において、歴史社会学的な手法についての議論に不足があるという点が指摘された。この点については、本研究上の重要な課題であると受け止めている。上記二点が進捗状況が「やや遅れている」と判断する主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず2024年度の研究内容として掲げた「個性調査簿」の記述にみる教師の実践と言説の関係性の探究に取り組みたい。明治期から昭和初期にかけて各学校で作成された「個性調査簿」は、すでに一定程度の収集ができている。この史料は、当時の教師により、児童の学業成績や操行・性質のみならず、保護者職業、家庭状況、家庭教育や保護者の希望、矯正すべき事項や訓練の方法が記されたものである。同史料は、博士論文で扱った制度や言説ではなく、実践という点から教育と罰の歴史を問い直せるものだと考える。博士論文で明らかにした学校での罰に関わる言説と比較検討する形で「調査簿」からみえる実践を検討し、罰をめぐる歴史を重層的に掴みたい。 またこれと並行して、博論審査時に指摘された方法論について、本研究の立場を明確にするための関連文献の精読と方法論の構築に努めたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)