Project/Area Number |
23K02290
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09030:Childhood and nursery/pre-school education-related
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
今川 恭子 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (80389882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊原 小百合 共栄大学, 教育学部, 講師 (50837490)
臼杵 深 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (60508191)
長井 覚子 (大沼覚子) 白梅学園短期大学, 保育科, 准教授 (60609923)
市川 恵 東京藝術大学, 音楽学部, 准教授 (70773307)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ナラティヴ共創 / 子どもの文化学習 / 音楽性 / 祭文化伝承 / 身体知 / ナラティヴ共創造 / 祭文化 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、子供が文化的実践に参加する様々な場面を捉え、「養育者との共鳴的な二項関係」から「文化的な型を共同参照して意味共有する表現者」へと育つ発達的道筋を理論構成することである。分析対象は、祭文化を子供から子供へ伝承する神楽稽古場面、保育において大人が子供に祭の活動を提案して教える場面、家庭で養育者が「型のある遊び」に子どもを巻きこみ表現を共同形成する場面である。これら場面において文化的な型を共同参照するナラティヴ共創過程を、音・動き・言葉の3視点から詳細に分析、総合的に検討することで子供が文化的実践者として育つ過程を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は子供が年長者と相互交渉しながら文化的実践に参加する場面を多角的に捉え、社会的に意味共有する表現者へと育つ道筋を明らかにすることを目的とする。研究の特色は、間主観性の生得的基盤としてMallochとTrevarthenが提唱した音楽性概念を援用し、子供と他者が双方向的に文化内の規範を参照して有意味表現を産出する過程をナラティヴ共創過程と捉える点である。子供は成長と共に自らを取り巻く社会的ネットワークを拡大し、文化的実践との出会いも拡大、多様化する。そうした文化的実践との出会いとして本研究は祭文化の伝承に注目した。 2023年度は長野県野沢温泉村にフィールドを定め、大人の介入なしに子供が伝承を担う六歌仙の舞の伝承場面の調査を実施した。人が生きる社会には、相互交渉を円滑にするような機序が取り入れられ「型」をもって共有される実践がある。共同体に伝承される祭の諸行事はそうした「型」をもつ実践の代表である。子供たちは「型」を学習することによって自分の生きる共同体の成員として育つ。子供たちの稽古場面の動作解析、個々に装着したICレコーダーで得た発話記録解析、さらに保護者と子供たちの小学校担任教師、六歌仙の舞経験者の成人などへのインタビューを通して、以下のことが明らかになった。野沢温泉村においては家庭―こども園―学校教育という連続が、村社会全体に開かれて繋がっていることによって、子供の文化的実践への参加=文化学習が有機的連続の中で進む。家庭での親密な相互交渉の関わりから始まって、能動的に「型」の共同参照=ナラティヴの共創造に参加するいわば社会システムの連続が存在するのである。その学習は単なる「型」の受け渡しではなく、「身体から身体へ」という方略で学習者自身が参照すべき型を自らの内面に形成することで継承されている。この学習方略が型の継承と同時に学習者の能動的な参加を担保している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度はとくに野沢温泉村のフィールドワークに注力し、5月、7月、8月、9月、12月、翌年1月と複数回にわたる現地調査を、研究協力者の理解を得て順調に実施することができた。コロナ禍で縮小されていた祭行事も2023年度は従来通りの規模に戻されており、稽古も従来通りの対面形式で実施された。これによって、稽古場面の動画撮影、発話の収集、インタビューはすべて予定通り実施出来た。多様な立場の成人と子どものインタビューデータ、稽古場面の動きと発話のデータに加えて、関係者の協力により多様な文書資料を得ることもできた。これらデータの分析によって、子どもが文化的実践者として社会化する過程を多方向から照らし出すことが可能となり、現在その解析途上である。データの解析と読み取りは、データが潤沢に得られた分、想定以上の時間が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も継続して野沢温泉村の神楽伝承を対象としたフィールドワークを実施する予定である。2024年度は、23年度まで3年間実行を務めた拍子方の子供たちが拍子方を務める最終年である。24年度中に、次代の拍子方への引継ぎ行われる予定である。したがって、今年度は、現在の拍子方の子供たちにとっては「拍子方から後見へ」という移行を経験する貴重な時期になり、稽古場面の観察だけでなく子どもたちへのインタビューなどを通して、子どもから子どもへという文化伝承のいわば社会システムの把握を深めたい。また、「ナラティヴ共創造」の観点から、「教えと学び」のあり方がどのように伝わっているのか、どのように具現化されているのかを、動画と発話の詳細な分析を通して明らかにしてく予定である。 一方で、東京都内の保育施設では、「保育内容」としての祭の実践が定着しつつあり、ここで「保育内容」として実践される様相を分析していく予定である。また、都内こども園において楽器と出会い、子ども同士・子どもと保育者同士の相互交渉の中で楽器の文化性に気づき、音のコミュニケーション性に気づく子どもたちの姿を継続的に観察中である。ここでは、「生態学的で原初的な自己」から始まり、感覚運動的なかかわりから楽器の文化性に気づくケースと、保育者の導きによって楽器の文化性に気づくケースの二つの道筋があることが見えつつあり、さらに有意味な「音を介したコミュニケーション」を樹立していく過程にも複数の道筋が見えることが明らかになりつつある。こちらも、音を介した相互交渉による音楽的社会化、という概念を援用して「ナラティヴ共創過程」の理論枠組みの適用可能性を探りつつ、分析・考察を進めていく予定である。
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