Project/Area Number |
23K02946
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10030:Clinical psychology-related
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
熊上 崇 和光大学, 現代人間学部, 教授 (40712063)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 心理アセスメント / 地域生活定着支援 / 発達障害 / 司法犯罪心理学 / 矯正施設退所者 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、矯正施設と地域の支援機関(医療、福祉、就労)とのスムーズな移行のための国内外の実践事例を集積し、わが国での発達障害のある矯正施設退所者の地域生活移行支援モデルを開発することとしたい。 そのために、事例を集積して触法障害者の受入に積極的な一部の事業所だけでなく、どの事業所でも受け入れられる汎用性の高いモデルにより、障害のある矯正施設退所者が安心して地域で生活できるための仕組みを、当事者の視点(ミクロシステム)、支援者の視点(ミクロおよびメゾシステム)、さらには制度上の視点(マクロシステム)から、持続可能性のある支援プログラムを作成していく。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、少年院や刑務所などの矯正施設を退所した人や、触法行為をした人のうち知的・発達・精神障害がある人が、地域生活でどのようなサポートが必要か、また支援者側にどのような支援理念や技術が必要であるかを、国内外の実践例や事例研究によって探るものである。 2023年度は、オーストラリア・シドニーで開催されたInternational association of forensic mental health service学会(国際司法メンタルヘルスサービス学会)に参加し、障害や精神保健上の困難を有する矯正施設退所者への支援について、国際的な動向を調査した。オーストラリアでは、リスクアセスメントとリスクマネジメントを刑事司法心理専門職と共に行い、司法心理職は、地域保健心理専門職との間の橋渡しを行って、医師、看護師、OT,サイコロジスト、ソーシャルワーカーが支援チームになって地域精神保健と協働するモデルが提唱された。とりわけ矯正施設退所後のメンタルヘルスコンディションが悪いと、犯罪リスクだけでなく、自傷・自殺リスクも高くなり、矯正施設退所後の1-2週間の自殺率が高いため、矯正施設退所前後の1-2週間の支援体制構築が必要であることが明らかになった。 国内のいくつかの発達障害を有する触法少年や矯正施設を退所した成人の地域移行支援を行っている施設への訪問およびインタビュー調査を行った。 第61回犯罪心理学会において「障害のある矯正施設退所者の出所後の地域移行支援の在り方」のシンポジウムを開催し、刑務所や少年院と地域における支援機関の連携の在り方について報告・討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の複数の発達障害等を有する矯正施設退所者を支援する機関への調査を行った。ある保護観察所が運営する就労支援センターでは、少年院の出院準備段階から、安心して支援センターに入所できるように面談を繰り返し、実際に就労支援センターに受け入れてからは、日々の農業研修だけでなく、休日の余暇の充実や、矯正施設退所後の就労・自立につながるために、地域自治体と協力して運転免許や大型特殊免許の取得への援助なども行っていた。また地域生活移行のためには、地域に受け入れられているという感覚が、地域社会および矯正施設退所者本人の双方に必要であるが、地域の運動会や祭りへ参加し、地域の青年団や町内会との交流を通じて、自分が必要とされている感覚を育むことで、触法行為をした青少年が抱きがちな孤立感や誰からも必要とされていないという感覚を減じ、自分が地域や社会で必要とされるという体験を重視し、そのことが矯正施設退所者への自尊心の向上にも寄与していることが明らかになった。 ある就労支援事業所においては、少年院や保護観察所との連携だけでなく、地域社会との連携が必要であること、具体的には、地域が必要とする農業支援や、草刈りなどボランティア活動に積極的に参加することで、地域にとって必要なメンバーだという感覚が高まり、住みやすく、その人が地域にとってなくてはならない人になっているケースも見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、国内および国外の先進的な地域生活移行支援をおこなっている諸機関への調査を継続していく予定である。また、支援者への継続的インタビューも行っているが、当初受入側支援者は、触法行為の経験者を受け入れることに身構えていたり、支援チームの中にも不安を抱いている者もあるが、実際に支援を開始しその人とともに伴走することを通じて、触法行為をした人も、発達面や家庭環境、就労面などで困難を抱えている人という認識に変化していることも確認できた。こうした支援者の経時的な心理的変化について、2024年度の司法福祉学会でも発表する予定である。 また、司法領域における子どもの心理アセスメントについても、子どもへの心理調査結果をどのように家庭裁判所や、矯正施設や地域生活移行支援、就労支援機関にフィードバックしていくか、その手順とアドボケイトの方法についてさらに研究を進めていく予定である。 知的・発達障害を有する矯正施設退所者を受けいれている社会福祉法人では、安心して生活できる基盤としての寮だけでなく、日中の就労場所の確保、食品・麺製造や清掃業を行うなかで、被支援者の発達特性に応じて役割や仕事内容を調整し、その人の得意な特性を活用した就労を用意し、さらにうまくいった時には表彰など目に見える形での強化も行われる行動療法的な支援も行われていた。2年間ほどの支援期間が終わり、他の地域に移行した後も、盆や正月行事などへの参加も経年的に行われ、いつでも連絡がとれアフターケアが受けられる、またいつでも受け入れられるという帰属感、メンバー意識があることで、その後の安定した生活に寄与しているという一連の流れが明らかになった。今後、こうした地域生活定着支援の一連の流れを図式化、モデル化していく。
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