分子ローター集合体が生み出すトポロジカル現象の開拓
Project/Area Number |
23K03318
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹原 陵介 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00869779)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 双極性分子ローター / 2次元集合体 / BKT転移 / 渦形成 / 集団運動 / トポロジー / 分子ローター / 電気双極子モーメント / 2次元集合体 |
Outline of Research at the Start |
物性物理学におけるトポロジーの最初の例として導入されたBerezinskii-Kosterlitz-Thouless(BKT)転移は、これまでに様々な系で発見されているが、電気双極子モーメントを秩序変数とするBKT転移は未だ観測されていない。本研究は、電気双極子モーメントを2次元的に配列し、かつ2次元面内で回転可能とする分子ローター集合体を対象に、電気双極子モーメントによるBKT転移の初の観測を目的とする。分子ローター集合体におけるBKT転移で発現する渦構造は従来のものとは異なり、荷電粒子として振る舞うことが予想されるため、その外場応答も検討する。一連の研究を通して、これまで未踏領域であった誘電体におけるトポロジーの分野を開拓する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2次元双極性分子ローター集合体において、未だ観測されていない電気双極子モーメントによるBKT転移の発現を見出すことを目的としたものである。これまでに得られている、正味の電気双極子モーメントを持つ分子ローターTrip-o-F2は、2次元ヘキサゴナル構造を示し、ソフトマテリアルの形態をとることをすでに明らかにしている。昨年度は、当初計画どおり、Trip-o-F2と同等の分子量で、同じ集合構造をとり、かつ正味の電気双極子モーメントを持たないTrip-p-F2を新たに合成することに成功した。電気双極子モーメントの有無による各種物理量への影響の違いを調べることで、電気双極子モーメントに起因する物性であるか否かを判断することができる。昨年度はTrip-p-F2の比熱の温度依存性を測定し、Trip-o-F2の比熱と比較検討した。Trip-o-F2の比熱の温度依存性のみ273 Kにピークを示し、Trip-p-F2にはそのような挙動が観測されなかったことから、273 Kのピークは2次元的に集合した電気双極子モーメントの存在に起因すると結論づけた。比熱のピークの大きさは数百 J/Kmolであった。ただ単に電気双極子モーメントが温度上昇に伴い回転し始めただけならば、比熱のピークの大きさは気体定数の半分程度の大きさになるはずであるが、それよりも大きな値を示したことから、低温相はダイポール間の相互作用により、ダイポールが秩序を持った状態であると考えられる。さらにTrip-o-F2とTrip-p-F2の比熱の温度依存性は、100 ~273 KでTrip-o-F2の方が高い値を示し、この結果もダイポールの秩序状態が実現していることを支持している。また足場をチオール化した三脚型トリプチセンを用いることで、2次元双極性分子ローターの単結晶体を得ることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、当初計画通り新規物質の作製に成功し、比熱の温度依存性の測定および比較検討まで至っていることから、研究はおおよそ順調に進行している。一方で昨年度は、Trip-o-F2とTrip-p-F2をペレット状および液晶セルに導入した状態で誘電率測定を試みたが、測定が困難であり、当初の計画通り進めることが難しかった。ペレット状態では、これら物質の誘電率が小さいことが原因で電気容量を十分かせぐことができず、電気容量がバックグラウンドによりも小さくなってしまったため、正確な誘電率の結果が得られなかった。一方これらの物質を融点まで持っていき、液晶セル内に導入することで誘電率を測定したところ、十分な電気容量が得られたことから、比較的信頼のできる誘電率の温度依存性を得ることができた。しかし、誘電率測定後に液晶セル内の試料の構造をPXRDにより調べたところ、2次元集合体の構造とは異なる構造をとっていたことが明らかになった。また液晶セルを用いた実験では、強電場によるポーリングを利用して分子集積させ、その上で誘電率測定を試みたが、やはり狙った2次元集合体にはならなかった。今後、引き続き2次元集合体状態でのTrip-o-F2およびTrip-p-F2の誘電率測定を試みる。しかし、液晶セル内の構造は2次元集合体の構造からかけ離れているわけではないためか、Trip-o-F2においては、273 Kに比熱異常に対応すると考えられる誘電異常が観測されたため、今後の誘電率測定により、ダイポールの挙動という観点から、比熱と誘電率の関係が明らかにできると期待している。以上より当初計画どおり進んでいる一方で、測定上の困難により一部実験が遅れてしまったことから、評価は「おおむね順調に進んでいる。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
先に示したように2次元集合体状態におけるTrip-o-F2およびTrip-p-F2の正確な誘電率測定を試みる。そのために現在誘電率測定系の改良を行なっている。また、より電気容量をかせぐことができるような形状のサンプル作製法を検討している。比熱の測定結果より、Trip-o-F2は273 K以下でダイポールの秩序相を示すと考えられることから、この温度域におけるP-Eカーブ測定を検討する。これにより強誘電的または反強誘電的な秩序状態であるかを判断することができる。核スピン-格子緩和率の温度依存性を測定し、Kubo-Tomitaフィッティングを行うことで、ダイポールの動的挙動を調べることが可能である。双極性ローターの挙動を明らかにするために、固体NMRの核スピン-格子緩和率の温度依存性と種々の物理量と比較検討する。将来的には、これらの分子を基板表面に膜形成させ、圧電応答力顕微鏡(PFM)測定することで、渦構造の実空間観測を試みる。温度可変なPFMにより、比熱異常が観測された温度を含め、各温度における渦の存在、また分子ローターの配向挙動の温度依存性を調べる。チオール基置換した三脚型トリプチセンを用いることで、2次元双極性分子ローター集合体の単結晶体も得られていることから、単結晶を対象に、比熱、誘電率、P-Eカーブの測定を検討する。足場をチオール化した三脚型トリプチセンはAu(111)面に高配向高密度に自己組織化単分子膜(SAM)を形成することから、この分子のSAMを金基板上に作製しPFM測定を行うことで、チオール基置換した分子集合体に対しても、ダイポールの実空間挙動を明らかにする。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)