Project/Area Number |
23K03346
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13040:Biophysics, chemical physics and soft matter physics-related
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
島田 良子 日本女子大学, 理学部, 教授 (90346049)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 液晶/溶媒混合系 / ゆらぎ / 相挙動 / 相分離 / 相転移 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、液晶/溶媒混合系における秩序変数、すなわち液晶分子の配向異方性と濃度のゆらぎの相関を解明し、その学術的理解を深化させることを目的とする。溶媒種ごとに変化する濃度ゆらぎを通じて配向異方性のゆらぎを制御して液晶転移温度(配向異方性のゆらぎの発散点)を調節する方法を構築することを目指す。そのために、均一混合系内の配向異方性と濃度のゆらぎを誘電緩和測定と動的光散乱測定で検出して両者の相関を実験的に確立して、この相関の統計モデルを構築する。 さらに、このモデルの解析から、液晶と溶媒の親和性がゆらぎに与える効果を定式化し、その結果に基づいて少量の溶媒添加で液晶転移温度を制御する方法を構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、液晶/溶媒混合系における2種の秩序パラメータの相関、すなわち液晶分子の配向異方性と体積分率のゆらぎの相関を実験的に解明し、その統計モデルを構築することである。研究初年度(令和5年度)は以下の成果を得た。 (1) ネマチック液晶である4-シアノ-4'-ペンチルビフェニル(5CB)と等方性溶媒であるフタル酸ジメチル(DMP)の混合系の相図を作成し、系の相挙動の全容を明らかにした。 (2) 5CB/DMP混合系の粘度、密度測定より動粘度を算出し、等方一相状態における濃度ゆらぎが動粘度に与える影響を明らかにした。 (3) 大阪大学の研究協力により、誘電緩和測定を実施した。その結果、5CB/DMP混合系における温度変化に伴う5CB分子の配向ゆらぎの変化、特に等方-ネマチック相転移温度付近における特異な変化を見出した。 (4) 京都大学の研究協力により、動的光散乱測定を実施した。予備的な結果ではあるが、自己相関関数の緩和時間を求め、5CBの濃度ゆらぎを定量化することができた。 以上の結果に基づき、相転移温度近傍における誘電緩和と動粘度の挙動について詳細な解析を行った。特に、この温度領域におけるゆらぎの増強度を表す高温漸近挙動からのずれは、誘電緩和時間の方が動粘度と比べて大きいことがわかった。これらの実験結果を解析するために、Flory-Hugginsの格子モデルとLandau-du Gennesのネマチック液晶の自由エネルギーモデルを組み合わせることでシンプルな自由エネルギーモデルを構築した。このモデルを用いて、高温における漸近挙動からのずれについて解析した結果、等方-ネマチック相転移温度付近の低温領域では配向ゆらぎと濃度ゆらぎが強く相関し、実験で観測されたように誘電緩和時間のずれを大きく増強させることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、基礎的な物理現象の確認を最優先に行い、研究対象の5CB/DMP混合系の相図を完成させた。学内での基礎的実験から熱力学的知見を得た後に、学内では保持していない先端装置を用いる実験に関しては、大阪大学および京都大学の協力を得て実施し、予定の実験計画をおおむね順調にこなすことができた。 その結果として、5CB/DMP混合系が持つ2種類の秩序パラメータ(体積分率と配向異方性)の相関についての知見を得ることができた。また、ゆらぎを支配する熱力学的因子として、Flory-Hugginsの格子モデルとLandau-du Gennesのネマチック液晶のモデルを組み合わせた自由エネルギーモデルを構築し、等方-ネマチック相転移温度の近傍では配向ゆらぎと濃度ゆらぎが強く相関していることなどを見出した。 これらの成果については2023年秋の日本物理学会年次大会で発表した。 以上の状況に鑑み、本研究はおおむね順調に進展していると結論される。
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Strategy for Future Research Activity |
5CB/DMP混合系に関する濃度ゆらぎと配向ゆらぎの相関に関しては、動的光散乱測定の結果を詳細に解析し、必要に応じてさらなる実験を行う予定である。そして、その結果を論文としてまとめ発表する予定である。また、国内、海外での学会で発表を行う予定である。 さらには、5CBに対する親和性が異なる溶媒としてテレフタル酸ジメチル(DMT)やフタル酸ジオクチル(DOP)などフタル酸ジアルキル溶媒を用いて実験を行う。時間領域では未減衰の配向異方性と濃度勾配がもたらす並進運動の抑制効果が、溶媒と5CBの親和性に応じてどのように変化するのか見極めたい。
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