高密度QCDの統一理論:ハドロン構造からクォーク物質まで
Project/Area Number |
23K03377
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古城 徹 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80568501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末永 大輝 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 特任助教 (90898909)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | クォーク・ハドロン・クロスオーバー / クォーク・ハドロン双対模型 / 有限密度QCD / 中性子星状態方程式 / 量子色力学的物性 / クォーク・ハドロン連続性 / 中性子星 / 高密度クォーク物質 |
Outline of Research at the Start |
中性子星は宇宙内で最も高密度なバリオン物質からなり、量子色力学(QCD)が活躍する舞台である。近年、中性子星観測が急速な進展を見せ、また低・高密度極限の理論解析が進み、従来の高密度QCD物質の理解に変革を迫っている。中性子星内部では、純ハドロン物質とも純クォーク物質ともつかないQCD強相関系の存在が示唆されている。本研究では、『クォーク・ハドロン連続性』という概念を基盤に、圧縮されたハドロン物質がクォーク物質へと融解する転移領域を包括的に解析し、ここ10年で装いを新たにした有限密度QCDに対する基本的描像を確立し、適切な計算手法の開発へと進む。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、研究課題として挙げた(1) クォーク自由度によるバリオン-クォーク物質転移の直接的な記述、 (2) その応用としての「ハイペロン問題」の解明、(3) 非摂動的グルーオン伝搬関数を基底に取った新しい有限密度摂動論の構築、 の研究課題のうち、特に(1)と(2)について集中的に研究を行った。特に、バリオンークォーク物質転移の機構を明快にする可解なクォーク・ハドロン双対模型を藤本、McLerran氏と共に構築した。この双対模型は、バリオン自由度による記述とクォーク自由度による記述に1体1対応の関係がつけられ、クォーク・ハドロン・クロスオーバー領域のような自由度が不明瞭な領域で特に有効である。この可解模型を解くことで、中性子星状態方程式の文脈で有名なMcLerran-Reddy模型の基礎づけを行なうことができた。特に、ハドロン物質からクォーク物質に向かうにつれて何故状態方程式が『硬く』なるのかを、クォークに対するパウリ原理と相対論的運動学という基本的な性質から説明することができた。現在は、この仕事を拡張しハイペロン問題を解析中である。 また、末永氏、千葉氏と有限アイソスピン密度の系をクォークメソン模型と呼ばれるクォーク自由度とメソン自由度を含む模型で解析した。この系では、格子QCDシミュレーションの結果があるので、その結果と模型計算との比較を行ないながら、有限密度系の概念をテストすることができる。我々は特にクォーク・ハドロン・クロスオーバーの概念がもたらす物理について、第一論文でゼロ温度の場合、第二論文で有限温度の場合を解析した。大きな成果は、ハドロン自由度が空間的に重なる約半分程度の密度でクォーク自由度が重要であることを示し、それが状態方程式の硬化に効いていることを示したことである。 以上の研究に関連して、国際会議にて4つの招待講演、国内研究会・セミナーを5回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バリオンークォーク物質転移の機構を明快にする可解なクォーク・ハドロン双対模型を藤本、McLerran氏と共に構築することができた。この共同研究は科研費申請の段階では予定されていなかったが、大変な重要な仕事となった。この仕事はPhysical Review Letters に掲載されている。模型の可解性により、古城が最初に作った模型の技術的困難に付随する曖昧さが解消され、与えられた模型の範囲内ではあるが数学的に正確な記述ができた。この研究をハブとして、研究課題2である「ハイペロン問題の解明」をするための良い準備が整った。現在ハイペロン問題を調べており、問題解決の枠組みはほぼ完成、数値計算のコードを作成している最中である。今年度の半ばまでには論文は完成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
クォーク・ハドロン双対模型をベースに、まずハイペロン問題を解決する。この流れで、中性子星合体や超新星爆発で必要となる有限温度、有限レプトン密度の状態方程式も記述可能になるので、数値シミュレーションに使える形で数値テーブルを作成する予定である。クォーク・ハドロン双対模型の概念は、2カラーQCDやアイソスピンQCDに対する数値実験でテストすることができるので、随時解析を行なう。 また、本科研費の課題の先にある「ハドロン物理と有限密度QCDの関係」を見据えた準備を始める。双対模型は、ハドロン中のクォーク運動量分布をインプットに、バリオン多体系のバリオンの状態占有率とクォークの状態占有率を関連付ける枠組みである。従って、媒質中のハドロンの構造が変われば、ハドロン中のクォーク運動量分布も変更を受け、従って有限密度系におけるクォークの状態占有率も影響を受ける。この観点から、媒質中のハドロン構造関数の物理と中性子星の状態方程式には重要な関連があることが見て取れる。この文脈で、ハドロンや原子核の重力形状因子の話題は重要である。 本科研費の研究課題を遂行しながら、EICやJ-PARCで行われるハドロン実験を、有限密度QCDに活用するための準備を行っていく。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)