Project/Area Number |
23K03411
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
須山 輝明 東京工業大学, 理学院, 教授 (20456198)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 重力波の重力レンズ / 暗黒物質揺らぎ / 重力波 / 重力レンズ / 物質揺らぎ |
Outline of Research at the Start |
重力波天文学が黄金時代を迎えようとしている。その時代において、重力波の重力レンズ効果を用いて銀河サイズよりも小さいスケールの暗黒物質密度ゆらぎのパワースペクトルを直接測定することが現実味を帯びてきている。本研究では、重力波の重力レンズの理論整備を行い、次世代の重力波観測計画と比較し、小スケールにおける暗黒物質の密度揺らぎを探る道具としての重力波の重力レンズの有効性を明らかにする。これによって、重力波の重力レンズを観測的宇宙論の新分野として確立するための基礎的貢献を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
ランダムに分布するダークマター揺らぎによって作られる重力ポテンシャルの中を伝搬する重力波の従う波動方程式を、重力ポテンシャルの大きさを摂動パラメターとして摂動の3次のオーダーまで求めるための定式化を行った。その結果に基づいて、重力レンズによる重力波波形の変調の平均と分散をボルン近似に対する次の補正項まで求め、変調の平均と分散の解析的な表式を導くことができた。摂動の2次のオーダーでは変調の平均はゼロにならないことが示せ、平均が暗黒物質パワースペクトルを探る新しい観測量となりえることを提唱した。導いた平均・分散の表式は、物質揺らぎの波数および視線方向に対する多重積分を含むが、その計算のための数値積分のコードを作成した。このコードに基づいて標準ΛCDMモデルにおける物質パワースペクトルおよびバイスペクトルに対して、変調の平均・分散を各周波数において数値的に評価し、その大きさと周波数依存性を明らかにした。その結果、まず、恒星やブラックホールなどのコンパクト天体によるショット雑音の寄与が効く高周波領域を除いては、ボルン近似の精度は非常によく、補正は高々数パーセントであることが分かった。これは先行研究のボルン近似による見積もりを正当化する結果である。次に、変調の位相の分散及び平均の周波数依存性は、対応するフレネルスケールでの物質パワースペクトルの形と強い相関を持つことが分かった。本研究により、変調の位相の分散と平均が、パーセクスケールという非常に小さいスケールにおける物質パワースペクトルを探る有効な観測量と成りうることが明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、先行研究ではボルン近似のレベルでしか見積もりがなされていなかったダークマター揺らぎによる重力波の重力レンズのシグナルを、摂動次数を上げて計算することでボルン近似の誤差を求めることができた。これは当初の計画に沿った成果である。さらに変調の平均が摂動の2次のレベルではゼロにはならず、ダークマター揺らぎを探る新しい観測量となりえることを明確に示すことができたことも、大きな進展である。これらの研究成果に基づく論文は、物理学分野では定評のある学術誌Physical Review D(査読付)に掲載されている。またいくつかの国際研究会でこの研究成果の内容の発表を行うことができた。以上の理由により、区分(1)の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の解析によってボルン近似への補正はボルン近似を破綻させるほど大きくはならないことが分かった。そこで、ボルン近似の範囲で異なる周波数における変調の相関関数を計算し、ガウス統計に従うことと組み合わせて、確率分布関数を求める。その後、重力波源としてブラックホール連星(或いは中性子星連星)を採用し、その重力波波形に、上で得られた分布関数に従う変調を加えた波形を構成する。そして、提案されている次世代重力波干渉計を考え、それらの予想感度曲線と構成した波形からシグナルノイズ比を標準的手法に基づき求め、レンズのシグナルがどの程度の統計的有意さで検出できるかを明らかにする
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