Project/Area Number |
23K03523
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
飯塚 理子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (80632413)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 希ガス / 下部マントル鉱物 / ダイヤモンドアンビルセル / ミッシングキセノン / 放射光 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、地球の下部マントルが希ガスを貯蔵しうるかを実験的に明らかにする。化学的に安定で高揮発性の希ガス元素キセノンXeは、コンドライト隕石と比較して地球や火星の大気中の存在度が他の希ガスに比べて枯渇しており、「ミッシングXe」問題として知られる。そこでレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験により、下部マントル領域に安定に存在するカリウム長石の高圧相へのXe取込みの可能性を探索する。アルゴンを用いた対照実験も行い、鉱物の結晶構造中へ貯蔵量やメカニズムを明らかにする。最終的に、地球内部におけるXeの元素移動について考察し、地球の形成についてのシナリオを構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地球の下部マントルが希ガスを貯蔵するリザーバーになりうるかを実験的に明らかにすることを目的としている。化学的に安定で高揮発性の希ガス元素キセノンXeは、コンドライト隕石と比較して地球や火星の大気中の存在度が他の希ガスに比べて枯渇している。この問題は、地球科学分野で未解決な「ミッシングキセノン問題」として知られており、キセノンのリザーバーと貯蔵メカニズムについて長年議論がなされてきた。本研究では、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験を行うことで、下部マントル領域に安定に存在する鉱物でアルカリ金属元素のホストにもなるカリウム長石の高圧相へのキセノン取り込みの可能性を探索した。さらに、この回収試料に対して希ガス質量分析やX線吸収分光の測定を行い、残存する希ガスの分布や量を求めた。この結果は、本研究が初めての成果である。また、地球内部の収支がよく知られているアルゴンを用いた対照実験も行い、鉱物の結晶構造中へ取り込まれるメカニズムを明らかにした。結果として、アルゴンはカリウム長石の高圧相には取り込まれなかったのに対して、キセノンは結晶構造中に取り込まれていた。このことから、カリウム長石の高圧相と希ガスのサイズとの間に関係性があることが考えられる。以上のことを踏まえて、最終目標として、地球内部におけるキセノンの元素移動について考察し、地球の形成についてのシナリオの構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、高温高圧実験の回収試料の希ガス同位体質量分析を行った。分析は、東京大学先端科学技術研究センターの角野浩史教授の研究室にある、希ガス同位体に特化した質量分析装置を用いた。レーザー加熱による抽出は試料がガスケットに固定されていないため、うまく行かなかったが、数十ミクロンの微小試料をアルミホイルに包んで燃やすことで加熱抽出を行い、結果として試料に取り込まれたXeを分析することに成功した。一方の対照実験として行ったArは残存していなかった。また、つくばにある高エネルギー加速器研究機構の放射光施設Photon FactoryのBL15A1にて、回収試料のX線吸収分光(XAFS)測定を行うことでも残存するXeを捉えることができた。これにより、高温高圧下でXeが長石の高圧相に取り込まれ、常温常圧でも閉じ込められたまま残っていたことが確認できた。これらの結果は、試料中に取り込まれたXeを直接捉えた初めての研究成果だと捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に高温高圧実験の回収試料の希ガス質量分析の手法が確立できたことから、引き続き高温高圧実験の回収試料の分析を進めて、データの信頼度を高めていく。ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験の回収試料が数μgもの極微少量であるため、残存する希ガスはppmオーダーとなり、継続して信頼性の高い定量をすることが難しい。この課題を克服し、温度圧力条件や試料状態・用いる圧力媒体を変えてデータ数を増やすことで、最終的に希ガスの最大溶存量の温度圧力依存性を見積もり、下部マ ントルでの存在分布や対応する鉱物種や深さ方向との関係についてを考察する。 結果がまとまり次第、論文を執筆し学術雑誌に出版する予定である。
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