ダブルトンネル接合を利用したラチェット型アップコンバージョン太陽電池
Project/Area Number |
23K03958
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 21060:Electron device and electronic equipment-related
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
朝日 重雄 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60782729)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
|
Keywords | 太陽電池 / バンド内遷移 / ヘテロ界面 / ガリウムヒ素 / 量子ドット / アップコンバージョン / ペロブスカイト |
Outline of Research at the Start |
エネルギー変換効率が50%を超える高効率太陽電池として研究代表者は2段階フォトンアップコンバージョン太陽電池を提案し、実現に向けて検討を進めている。この太陽電池は2つの低エネルギーフォトンから1つの高エネルギー電子を生成することで、電圧を維持しながら電流を増加させる。今まで研究代表者は2段階フォトンアップコンバージョン現象により大きな電流上昇を実現してきたが、電圧の維持が困難であった。そこで、トンネル接合を利用した新たな構造を採用することにより電圧を維持しながら電流を増加させ、変換効率を向上させることを実証する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
我々は2個の低エネルギー光子から1個の高エネルギー電子を生成するアップコンバージョン現象を利用した超高効率太陽電池、2段階フォトンアップコンバージョン太陽電池(TPU-SC)を提案し、実現に向けた検討を進めている。この太陽電池は単接合太陽電池では使用できない低エネルギー光子を使って発電することが可能であり太陽電池の高効率化が期待できる。これまでに低エネルギー光子による大きな短絡電流生成を実証している反面、低エネルギー光子による開放電圧上昇が僅かであり、変換効率向上を実現できていない。そこで、本研究では2個のトンネル接合を連結した、ダブルトンネル接合を利用したラチェット型TPU-SCを提案した。ダブルトンネル接合により伝導帯にエネルギー障壁が形成されることで、アップコンバージョンした電子がエネルギー緩和せずに電極に到達することを期待する。本研究課題の1年目となる今年度は、実際にダブルトンネル接合を持つTPU-SCを分子線エピタキシ法により作製し、光電特性を評価した。作製したTPU-SCはGaAsとAlGaAs、さらにInAs量子ドットを用いた。このTPU-SCの構成はこれまでの研究で得られた知見を基に作製した。またダブルトンネル接合として、高密度にドープされたn-GaAs、p-GaAs、n-GaAsの3層を挿入した。実験ではAlGaAsとGaAsのヘテロ界面に電子を蓄積する1段階目励起光の強度と2段階フォトンアップコンバージョンを発現する2段階目励起光の強度を変化させながら光電流と光電圧を測定した。その結果、追加赤外光の照射による電圧上昇は、ダブルトンネル接合の無いTPU-SCと比べ約3桁大きな値となった。しかし、電流上昇はダブルトンネル接合の無いTPU-SCと比べ約1桁小さな値となった。今後は、変調ドープ層の導入により、大きな電流上昇も実現する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は実際にダブルトンネル接合を有するTPU-SCを作製し、その効果の実験的実証を行った。実験では、GaAsを励起する784nmの励起光とTPUを発生させる1319nmの赤外光をTPU-SCに照射し、赤外光の追加照射により発生する光電流と光電圧を、励起光強度を変化させながら測定した。その結果、追加赤外光の照射によるバンド内遷移(TPU)が発現し、光電流、光電圧の上昇を観測した。また、実験ではヘテロ界面の位置を変えたTPU-SCをいくつか作製し、TPUの効率の差を確認した。その結果、ヘテロ界面とダブルトンネル接合の距離が15nmのTPU-SCが最も高い効率となることが分かった。また、最も光電圧の上昇量が高いTPU-SCにおいて、追加赤外光の照射による電圧上昇は、ダブルトンネル接合の無いTPU-SCと比べ約3桁大きな値となった。以上のように、今年度の時点でダブルトンネル接合により、アップコンバージョンによる大きな光電圧上昇の実験実証は今年度の大きな成果と考える。しかし、電流上昇はダブルトンネル接合の無いTPU-SCと比べ約1桁小さな値となった。今後は、変調ドープ層の導入により、電流上昇を上昇させることを検討する。また、平行してペロブスカイトとGaAsの界面でのアップコンバージョン現象の実験実証も行い、実証に成功した。これは、ヘテロ界面におけるアップコンバージョン現象が材料系に依らないことを示しており、この物理現象を広範囲に展開することが可能であることを示している。この部分に関しても、本研究課題に関して大きな成果と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
ダブルトンネル接合を設けることにより、明確にTPUによる電圧上昇量が増加した一方で、電流上昇量については、ダブルトンネル接合を含んでいたいTPU-SCよりも低い値となった。これはダブルトンネル接合により、ヘテロ界面の内部電界が低下し、赤外光の吸収によりアップコンバージョンされた電子の取り出し効率が低下したためと考えられる。そこで変調ドーピング層を設けることにより、ヘテロ界面の電界強度を高めることで、アップコンバージョンされた電子の取り出し効率を上昇させることができることを考えている。以上のことを実験的に実証する。一方で、正孔のアップコンバージョン現象の解明も行っている。これは、ヘテロ界面において、正孔をアップコンバージョンさせる現象は、追加赤外光の照射により、逆に電流を減少させることが分かっているが、このメカニズムの解明には至っていない。これについても継続して検証する。さらに、平行してペロブスカイトとGaAsの界面でのアップコンバージョン現象の実験も継続して行っていく。
|
Report
(1 results)
Research Products
(13 results)