Project/Area Number |
23K03968
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 21060:Electron device and electronic equipment-related
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山口 留美子 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (30170799)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 液晶ディスプレイ / ツイステッドネマチックモード / アンカリング力 / 低電圧駆動 / ネマチック液晶 / 分子配向 / 表示素子 |
Outline of Research at the Start |
片側基板にのみ「弱アンカリング」界面を用いた非対称アンカリング界面構造とすることで,「液晶分子配向の弾性ひずみにより弱アンカリング界面上の液晶分子を制御する」新規な概念を導入する。そのため,非対称アンカリング界面間での液晶分子の初期配向状態と電圧印加時の透過率の数値解析,弱アンカリング配向膜材料探索とアンカリング力制御,を行う。これにより,液晶配向現象理解の進展をはかるとともに,昇圧回路が不要,低照度での太陽電池駆動など,環境発電電源利用が可能な,低電圧駆動(~1V)のLCD創製を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
液晶素子において,片側基板にのみ「弱アンカリング」界面を用いた非対称アンカリング界面構造とすることで,「液晶分子配向の弾性ひずみにより弱アンカリング界面上の液晶分子を制御する」新規な概念を導入し,低電圧駆動(~1V)の液晶ディスプレイ(LCD)の創製を目指す研究である。 ネマチック液晶における,スプレイ歪:K11,ツイスト歪:K22, ベンド歪:K33の弾性定数において,ハイブリッド配向素子では垂直配向の極角アンカリング力をある数値以下にすると,スプレイベンド歪のないホモジニアス配向に転移する。この時の臨界アンカリング力Wcは,Wc=K11/d(d:液晶層厚)となることを先行研究より明らかにしていた。ねじれハイブリッド素子においても,2K22=K33であるときは,Wc=K11/dであった。すなわち極角アンカリング力をK11/d以下にすれば,TN素子と同じ配列(疑似TN)モードが成立することがわかった。疑似TNモードでは,同一の弾定数と誘電率異方性を用いた通常のTN素子と比較し,駆動電圧V10は約2.3 Vから0.4 Vの低減が可能となることが算出できた。 一方で,K22=K33としたときはK11/dよりも3桁低いアンカリング力で疑似TNに転移すること,K22>K33ではアンカリングを減少させても疑似TNに転移することができないこと,等も明らかとした。その他のパラメータとして,自発ねじれピッチ長,平行配向膜上のプレチルト角,が臨界アンカリング力に及ぼす影響を調べ,疑似TNに転移できるパラメータ条件を探った。 弱アンカリング配向膜の検討においては,水素結合性液晶のポリイミドラビング膜におけるアンカリングを評価したが,通常の液晶と同等のアンカリング力であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2K22=K33条件における,平行配向膜上のプレチルト角と,ホモジニアス配向に転移するアンカリング力の関係では,スプレイベンド歪が消失するための明確な臨界アンカリング力Wcはなく,垂直配向側のチルト角は,アンカリング力の減少と共に水平配向側のプレチルト角に向かって漸近的に減少する(2023年日本液晶学会討論会にて報告)。さらに,この時の,電気光学特性への影響も明らかにしている。加えて,基本のTNモードでは自発ねじれのないピッチ長無限大,すなわちカイラルパワー(1/p)がゼロでの計算を行うが,自発ねじれを4d(今回は20μm)としたとき,Wcは約2倍に増加すること,カイラルパワーの増加に対し,Wcはほぼ直線的に増加していることも分かった。 配向膜と液晶の材料がアンカリング力に及ぼす影響に関して,通常のディスプレイ用ポリイミドラビング膜に対し,水素結合性液晶を適用した時の評価を行った。結果として,通常の液晶と同等のアンカリング力であり,カルボキシル基は配向膜と水素結合等の関係を作っていないことが予想された。 加えて,申請時にはなかった,「ハイブリッド配向において,平行配向の極角アンカリング力をある数値以下にすることで,スプレイベンド歪のないホメオトロピック配向に転移した,疑似ねじれ垂直配向(VA)モード」を提案するに至っている。セル内でπ/4ねじれをもつネガ型のネマチック液晶を用いたVA液晶素子において,電圧無印加時に疑似ねじれVAモードとなるように,数値解析的に各パラメータを算出し,電気光学特性を求めることができた(2024応用物理学会春季学術講演会にて報告)。従来のねじれVAモードよりも低電圧駆動画可能であることを明らかにすることができた。このことから,本研究課題の進捗状況は,当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2K22=K33以外の条件においても,スプレイベンド歪が消失し疑似TN配向となるためのWcと,各弾性定数の関係を明らかにすることを進める。K22>K33であるときには疑似TNモードが成立するようなWcは存在しないことが明らかとなったが,幸いにもこれまでに開発されディスプレイ用のネマチック液晶のほとんどはK22<K33である。液晶の弾性定数とセル厚が決まっているとき,必要なWcを算出することができる関係式を明らかにすることを目指している。また,実際の素子作製に向けては,自発ねじれピッチ長,平行配向膜上のプレチルト角は有限な値をとるため,2K22=K33以外の条件において,これらのパラメータとWcの関係を,数値解析的に明らかにしていく。 また,新しく提案された「疑似ねじれ垂直配向(VA)モード」においても,同様の各パラメータが,当該モードの成立条件,およびその電気光学特性に及ぼす影響について解析を進める。 素子作製においては,弱アンカリング表面として報告のあるOctadecyltrimetoxysilane (C18)を用いて,配向膜を作製する。弱アンカリング界面制御技術の確立を試み,数値解析との対応を検討する。さらに,液晶と配向膜界面の物理化学的相互作用に関する知見として,従来のPI配向においても,液晶材料依存性の有無について検討を行う。
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