胃がん腹膜播種の免疫細胞ネットワーク解明に基づく複合的がん免疫治療法の開発
Project/Area Number |
23K08188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 55020:Digestive surgery-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長岡 孝治 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80649799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 泰之 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00260498)
垣見 和宏 近畿大学, 医学部, 教授 (80273358)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 胃がん腹膜播種 / TCR導入T細胞 / ネオアンチゲン / 腫瘍内微小環境 / シングルセル解析 / 免疫治療 |
Outline of Research at the Start |
胃がんの転移・再発の形式の一つである腹膜播種は、予後不良因子であると同時に、 QOLを著しく低下させる病態である。抗PD-1抗体も腹膜播種を伴う胃がん患者の多くに対しては効果がない。これは、胃がん腹膜播種に特異的な免疫抑制環境が存在するためと考えられた。そこで本研究では、胃がん腹膜播種の免疫環境を明らかにすることを目的として、マウスで胃がん腹膜播種モデルが可能なYTN16細胞株を用いて、腹膜播種に浸潤した免疫細胞の解析を行う。明らかとなった免疫抑制環境をコントロールする薬剤の投与と、がんを攻撃するTCR遺伝子導入T細胞の腹腔内投与を行う複合的免疫治療の開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、マウス胃がん細胞株YTN16を用いた胃がん腹膜播種モデルを用いて、胃がん腹膜播種の免疫抑制環境を明らかにし、TCR導入T細胞(TCR-T)治療と免疫抑制除去の複合的免疫治療を開発することを目指している。 胃がん腹膜播種腫の免疫環境を明らかにするために、YTN16の皮下腫瘍と腹膜播種組織のバルクRNA-Seqを行った。mMCP counterにより構成細胞を推定し比較すると、皮下腫瘍と比べて腹膜播種組織にはT細胞、単球/マクロファージが少なく、内皮細胞が多かった。 腹腔内の腫瘍量を経時的、定量的に評価可能な系を作製するために、YTN16細胞株にルシフェラーゼ遺伝子を導入した。限界希釈後、In vitroでDルシフェリンを加えて最も強い発光が認められたクローンを選択し、YTN16L細胞とした。1×10^7のYTN16親株または、YTN16L細胞をB6マウス腹腔内に接種すると、3週間後に親株とYTN16Lの両方で腹腔内に肉眼的に同程度の播種組織が観察された。またYTN16Lを接種1週間後からDルシフェリン投与後の腹腔内にルシフェラーゼによる発光が認められた。 次に、ネオアンチゲン特異的TCR-T細胞の作製方法の最適化を行った。TCR遺伝子は変異型(m)Cdt1反応性CTLラインからクローニングし、レトロウイルスベクターを作製した。マウスの脾臓からCD8+T細胞を精製し、抗CD3/CD28抗体ビーズで刺激し、mCdt1特異的TCR遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて導入した。その後、ミスペアリングを防ぎTCR発現を増強させるため、Trac、Trbc1/2に対するgRNAを用いたCRISPR/Cas9ゲノム編集により内在性TCR遺伝子をノックアウトした。内在性TCRノックアウトにより、mCdt1-dimer陽性細胞は16.8%から48.2%に増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バルクRNA-Seq解析の結果、YTN16腹膜播種組織には、T細胞の浸潤が少なかった。このことから、ネオアンチゲン特異的TCR-T細胞を腹腔内に直接投与することが高い治療効果を示すことが期待される。 これまでYTN16腹膜播種に対する治療の評価をするためには、マウスを安楽死させて腹腔内を肉眼的に観察する方法をとっていたため、評価のタイムポイントがマウス1匹につき1ポイントに制限されており、また評価方法に客観性が不足していた。今回、YTN16Lを作製したことにより、経時的、定量的に腫瘍の量を評価することが可能となり、今後の研究が大きく加速することが期待できる。 さらに、TCR-T細胞の作製において、ネオアンチゲン特異的TCR遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて導入し、さらに内在性のTCR遺伝子のみをCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトする手法を用いることにより、導入したTCRの細胞表面への発現が飛躍的に上昇することが明らかとなった。 令和5年度の成果に基づき、令和6年度から胃がん腹膜播種モデルに対するネオアンチゲン特異的TCR導入T細胞治療の評価が可能となった。以上のことから、研究は順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度はYTN16皮下腫瘍および、腹膜播種のバルクRNA-Seqデータを用いて腫瘍内の免疫細胞を評価した。令和6年度は様々なgene setを用いたGSEAまたはssGSEAを行うことにより、胃がん腹膜播種組織の詳細な解析を行う。また、フローサイトメトリーなど他の手法でRNA-Seqデータの検証を行う。また、公開データベースの腹膜播種を伴う胃がん患者の次世代シーケンスデータを用いて、実際の胃がん患者の免疫状態を解析する。 また、令和5年度は、TCR-T細胞の調製方法と、YTN16Lの腹膜播種モデルを確立したので、これらを用いて、腹膜播種に対するネオアンチゲン特異的TCR-T細胞治療の効果を検討する。さらに治療後の腹膜播種組織をフローサイトメトリーなどで解析することにより、投与したT細胞の機能や疲弊状態、治療により新たに誘導される免疫抑制などを評価する。
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Report
(1 results)
Research Products
(12 results)