金属クラスターと表面有機官能基の協奏的触媒作用によるCH結合変換
Project/Area Number |
23K13602
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 27030:Catalyst and resource chemical process-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
長谷川 慎吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 助教 (40964804)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 金属クラスター / C-H結合活性化 / 表面有機官能基 / 協奏的触媒作用 / 固定化触媒 / 酸化的カップリング / CH結合活性化 / 固体触媒 |
Outline of Research at the Start |
粒径約2 nm以下まで微細化された金属クラスターは離散的な電子構造に由来してサイズ特異的に高い反応性を示すことが知られており、その触媒応用が精力的に研究されている。担持金属クラスター触媒の担体表面に有機官能基を導入して反応活性点を集積させることは触媒の高性能化に有効であると考えられるが、そうした触媒設計はこれまで検討されてこなかった。本研究では、金属クラスターと有機官能基を担体表面上に隣接して固定化する手法を開発し、それらの協奏的な触媒作用によって高難度なC-H結合変換を達成することで、高性能金属クラスター触媒の設計指針を実証することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度における研究では金属クラスターと表面有機官能基の協奏的なC-H結合活性化の実現に向けて、(1)金属クラスターによるC-H結合活性化反応の探索、(2)固体表面を修飾する有機官能基のライブラリー拡張と触媒応用、(3)アルコール酸化反応におけるPdクラスターと表面アミノ基との協奏的触媒作用の実証に取り組んだ。 まず、金属クラスターによるC-H結合活性化反応を探索した結果、PdRuクラスターによるアレーン類の酸化的ホモカップリング反応を見出した。ベンゼンの酸化的ホモカップリング反応において、Pdクラスターの触媒回転数がRuとの合金化によって約4倍まで増加することを明らかにした。さらに、RhRu二元酸化物クラスターによるアレーンとカルボン酸との酸化的カップリング反応を見出し、分子状酸素を酸化剤として利用可能且つ基質適用範囲の広い優れた触媒反応系を実現した。 次に、固体表面に導入可能な有機官能基を検討した結果、シリカ表面に環状カーボネート・鎖状カーボネート・環状尿素・鎖状尿素を固定する手法の開発に成功した。さらに、シリカ表面に固定した環状カーボネートが、アルデヒドのヒドロシリル化反応に対して特異的に高い触媒活性を示すことを見出した。環状カーボネートと表面シラノールが協奏的にシランとアルデヒドを活性化することで反応を実現させていることを明らかにした。この成果については論文発表を行なった(JACS Au 2023, 3, 2692.)。 また、担持金属クラスターと表面有機官能基が協奏的なC-H結合活性化を起こす蓋然性を確認するため、アルコールの酸化的脱水素反応においてシリカ上のPdクラスターと表面アミノ基が協奏的な触媒作用を示すことを実証した。すなわち、シリカ担持Pdクラスターによるアルコール酸化の触媒回転数が表面アミノ基によって34%向上することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度ではPdRuクラスターがアレーン類の酸化的ホモカップリング反応に対して特異的に高い触媒活性を示すことを見出した。ベンゼンの酸化的ホモカップリング反応において、Pdクラスターの触媒回転数がRuとの合金化によって約4倍まで増加し、既存のPd触媒を超える回転数453を達成した。これによってアレーンの酸化的カップリング反応に対するナノ合金触媒の有効性を実証した。また、RhRu二元酸化物クラスターが分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸との酸化的カップリング反応を進行させることを見出した。これまでの報告例では分子状酸素を酸化剤として利用可能且つ基質適用範囲の広い触媒反応系は存在しなかったため、非常に有用な新規触媒反応系を実現した。 また、固体表面を修飾する有機官能基のライブラリーを拡張するとともに、新規の固定化有機分子触媒としての応用にも成功した。すなわち、シリカ表面に固定した環状カーボネートが表面シラノールと協奏的にシランとアルデヒドを活性化することで、アルデヒドのヒドロシリル化反応を進行させることを見出した。固定していないフリーの環状カーボネートは全く触媒活性を示さないため、この研究成果は固体表面への固定化が不均一有機分子触媒の設計戦略となることを示している。また、この成果については論文発表を行なった(JACS Au 2023, 3, 2692.)。 加えて、アルコールの酸化的脱水素反応においてシリカ上のPdクラスターと表面アミノ基が協奏的な触媒作用を示すことを実証し、担持金属クラスターと表面有機官能基が協奏的なC-H結合活性化を起こす蓋然性を確認した。 上記の通り、先駆的かつ独創的な成果が得られているため2023年度については当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度において得られた独創的な成果と知見に基づき、2024年度では金属クラスターと表面有機官能基による協奏的C-H結合活性化反応の実現を目指す。すなわち、金属クラスターによる新規なC-H結合活性化反応を開拓できているため、それらの触媒反応系に表面有機官能基を導入する。具体的には、アレーンの酸化的カップリング反応に有効なPdRuクラスター、あるいはアレーンとカルボン酸との酸化的カップリング反応に有効なRhRu酸化物クラスターを有機官能基で修飾した担体に担持し、触媒性能の向上を試みる。これまでの検討の結果から、PdRuクラスターおよびRhRu酸化物クラスターによるアレーンのC-H結合活性化過程ではカルボン酸が極めて重要であることがわかっている。そこで、表面カルボキシル基を導入した種々の担体を調製し、それにPdRuクラスター・RhRu酸化物クラスターを担持することで触媒を調製する。得られた触媒は溶媒量のカルボン酸を必要としないクリーンな反応系を実現するものと期待される。 表面有機官能基および金属クラスターの構造について詳細なキャラクタリゼーションを実施する。表面有機官能基については固体核磁気共鳴分光、フーリエ変換赤外分光、有機元素分析、および熱重量分析によって担体表面への導入量を定量し、分子構造の保持を確かめる。金属クラスターについては透過電子顕微鏡による形態観察・粒径評価・元素マッピング、粉末X線回折、X線光電子分光、およびX線吸収分光によって粒子サイズ・元素分布・酸化状態、そして有機官能基との相互作用を明らかにする。触媒反応の反応機構については、速度論的同位体効果や置換基効果を調査し、各成分の反応速度次数を初速度法で決定することで、その詳細を理解する。推定された反応機構に基づき理論計算を実施することでその裏付けを行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(13 results)