ニホンミツバチの越冬に有益な腸内細菌およびその増殖に関わる栄養素の特定
Project/Area Number |
23K13972
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 39060:Conservation of biological resources-related
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
鈴木 亮彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 特別研究員 (60964244)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | ニホンミツバチ / 腸内細菌 / 越冬 / ミツバチ / 保全 / 有用微生物 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,将来的な腸内細菌を介したニホンミツバチの保全方策の確立に役立つ知見を得るために,越冬というミツバチの特徴的な生態学的イベントにおける腸内細菌の果たす役割に着目し研究を行う.すなわち,1)ニホンミツバチにおいて冬期に増加する腸内細菌を特定したうえで,2)細菌分離培養から菌株の取得,および機能解析を行う.また,3)分離された有用腸内細菌のの増殖に必要な栄養素を明らかにすることを目的とする.
|
Outline of Annual Research Achievements |
ミツバチの生活史において,越冬期には資源も乏しいなかで熱産生や病原体への抵抗性を維持する必要があるため,1年で最も過酷な時期である.申請者はこれまで,国内在来種であるニホンミツバチから新規候補種と期待される細菌種を多数発見した.本研究では,「ニホンミツバチの越冬には腸内細菌が有益な機能を果たしているか?」を研究課題の核心をなす問いに設定し,この問いに応えるため,本年度では(1)ニホンミツバチの越冬期における腸内細菌叢の特徴を明らかにしたうえで,(2)越冬期に増加している細菌種の分離培養を試みた. 国立環境研究所内および茨城県内の養蜂家の所有するニホンミツバチ計4コロニーを対象に,2022年10月(越冬前),同年12月(越冬期),2023年3月(越冬後)の3時期の腸内細菌叢の組成を次世代シーケンサーMiSeqを用いて明らかにし,比較した. その結果,まず,ニホンミツバチの腸内細菌叢は既報のミツバチと類似した組成を有していた一方,Apibacter属の割合が他のミツバチより多いことが分かった.次に,ニホンミツバチの主要細菌属であった計6属の相対存在量を3時期間で比較したところ,2属が越冬前と比べて越冬期に増加していた.そして,これらの2属の配列をデータベースに対して相同性検索したところ,いずれも既知の細菌種に対して低い相同性(<98.5%)を示した.したがって,ニホンミツバチの越冬期には新種候補種である細菌が何らかの有用な働きをしていることが示唆された.そして,これらの細菌を対象に分離培養を行ったところ,これまで計100株以上が分離された.現在は,分離株の種同定を行っている. ミツバチの腸管寄生性Lotmaria属原虫をニホンミツバチから初めて検出した.同原虫種がニホンミツバチの新たな脅威となるか否かについて明らかにするため,現在は,国内の寄生実態の把握と虫体分離を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではまず,ニホンミツバチの越冬期における腸内細菌叢の特徴を明らかにすることができた.すなわち,(1)ニホンミツバチは既報の他のミツバチ種と極めて類似した組成を有している一方,Apibacter属細菌が多いという特徴を有していたこと,(2)主要細菌属計6属のうち,2属が越冬前と比べて増加していたこと,(3)主要6細菌属の配列のほとんどは既知の細菌種に対して低い相同性を示し,新規候補種が豊富である可能性があること,が明らかとなった.これらの結果は,1件の国内学会および1件の国内研究会で計3演題として口頭発表及びポスター発表を行った.現在は国外雑誌への学術論文としての投稿を進めている.また,ニホンミツバチの腸内細菌のゲノム解析およびダニ寄生個体のRNA-Seqデータがそれぞれ国外雑誌にて公表された. また,すべての分離株の種同定には至っていないが,これまで越冬期のニホンミツバチから計100株以上を分離することに成功しており,ミツバチからの効率的な分離培養法も確立できた. ニホンミツバチの腸内細菌叢解析を行う過程で,ミツバチ腸管寄生性のLotmaria属原虫の存在を初めて明らかにした.現在のところ,ミツバチ個体や腸内細菌叢に対する影響は不明であるが,ミツバチの健康を脅かす可能性を有した寄生虫が国内にも存在することを明らかにできた. 以上より,本研究はおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,種同定できていない分離株の種同定を行う.それら分離株に,越冬期に増加していた細菌種が含まれていた場合,それらを用いて実験室内での同細菌種のニホンミツバチへの投与実験を行う.すなわち,菌株投与群と非投与群間で生存率,免疫賦活化作用,腸内の短鎖脂肪酸量を比較することで,個体への有用性を明らかにする.同時に,分離株のゲノム解析から包括的に機能を予測する.
|
Report
(1 results)
Research Products
(8 results)